長い春の先にあったのは
俺はあんぱんを飲み込んで口を開く。頭に藍の笑った顔が浮かんだ。

「数週間ずっと泊まり込みで顔すら見てねぇけど、藍は寂しがって泣くような女じゃねぇからな。あいつだって医者として仕事忙しいし」

「ふ〜ん。でも藍ちゃんと付き合ってもう五年だろ?そろそろ結婚とか考えないわけ?」

結婚ーーーその単語を聞いてブワリと顔が熱くなる。眠る前まで考えていた事件のことが頭から飛んでしまった。俺は梶原の胸ぐらを掴む。

「テメェが気安く「藍ちゃん」とか言うんじゃねぇよ!!そもそも俺に結婚とか言うけどよ、お前はどうなんだ!!」

「俺はまだみんなの恋人だからさ〜。運命の相手を見つけるまではフリーでいるよ〜」

ニコニコしながら梶原は言う。何が「みんなの恋人」だ。ただの女好きのくせに。

「藍ちゃん、写真でしか見せてもらったことないけど綺麗だよね〜。スタイル抜群だし、藍ちゃんとなら結婚してもいいかも〜」

「ふざけんな!!藍は俺のだ!!」

ニコニコを通り越してニヤニヤし出した梶原に俺は大声で言う。こんな軟派野郎と藍が結婚?ふざけている。

「藍と結婚するのは俺だ!!」
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