友情結婚って決めたのに 隠れ御曹司と本気の恋をした結果
「お互いにお仕事が大変だけど、頑張ろうね!」
『はい……』
「九尾くんやご両親に駄々を捏ねて、迷惑をかけちゃ駄目だよ?」
『あれは! あいつらが、菫さんに合わせてくれねぇから……!』
「自宅で会えないなら、仕事が落ち着いた時にどっちかが会いに行くしかないよ」
『菫さんは俺と会えなくても、平気みたいですね』

 蛍くんの発言には、「俺は菫さんのことをこんなに思っているのに」という感情が滲み出ていた。
 それをストレートに伝えてこないあたりが、彼らしいと思う。

「うんん。喪失感、凄いよ。2年間、ずっと一緒に行動していたからかな? 失って始めて気づくことってあるんだなぁって、感慨深くなっちゃった」
『俺はそばにいられなくなっただけで、ここにいます。お互いに会いたいと思えば、いつだって……』
「そうだよね。積み重なる未処理の仕事を見て見ぬふりをすれば、いくらでも時間は作れる。それをせずに文句を言うのは、違うか……」

 私達は会話を続けることでどうにか気持ちの折り合いをつけ、笑い合う。
 いつの間にか日々の疲れは吹っ飛んで、幸せな気持ちでいっぱいになったせいか。
 どうしても会いたいと思い焦がれる感覚は、どこかへ消え去っていた。
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