弱さを知る強さ
◎恭介◎

次の日、実習が終わって夕方
俺のところにちゃんと来た
簡単に診察を受けたら
昨日と同様、「記録手伝って〜」
と教科書を広げ始めた

最後の外来患者だったし救急からの呼び出しもなく入院中の受け持ち患者も容態は落ち着いていて
記録に付き合うことができた

「じゃあ金曜日
記録手伝ってくれてありがとう」

「金曜日までになんかあったら連絡しろよ」

「うん」

それから朝
《元気、ご飯は食べた
母性の実習に行ってきます》

簡単な連絡が毎日あり金曜日になった

そして夕方になってもあいつは来ない

...ブルルル

電話にも出ない

またボイコットしたか?

...プルルル

4.5回かけた後ようやくでた

『...はい』

声は弱々しかった

「大丈夫か?」

『...大丈夫...だけど今日はいけ...ない』

「どこにいんの?」

『...』

「おい、救急車よべ」

『...嫌だ』

「どこにいんの?」

『...金森...先生』

「救急車よんでここまで運んでもらってほしい」

『...痛い』

「準備して待っとくから」

『...痛くて呼べない』

...ぷーぷーぷー

電話が切れた
これは危ない

急いでかけ直しても電話に出ない

意識なくしたか?
場所も聞き出せなくて俺にできること...

当直でもないし就業時間は過ぎてる

病院を出て
神田 あやはの家に車で向かった

途中で救急車のサイレンが聞こえてこないかも注意しながら車を走らせたが特になく家に着いた

電気がついてる?

...ピンポーン

「...はぁ...はぁ」

中から乱れる息が聞こえる

「大丈夫か?」

「...金森先生」

「入るぞ」

鍵は閉まってなくて扉を開けたら神田あやはは玄関に座り込んでいた

「...ごめん...なさい
携帯の...充電が切れて」

「救急車よぼう」

「...いやっだ...大丈夫だから」

「俺の車より救急車の方が早い」

「...嫌だ...お願い、や...めて」

「病院いったらましになる」

「...はぁ...はぁ」

「じゃ俺の車でいくか?」

「...」

「救急車で行こう」

「...」

半ば諦めたようになにも言わなくなった
すぐに救急車を呼んだら10分くらいできてくれた

「医者です、同乗します」

俺の病院を指定して運んでもらった
 
その間も痛そうでなんとか意識を
保っている様子だった

「もう着くから」

「...」

目を瞑って返事もしなくなった
顔をしかめて本当に苦しそう

救急車だと15分くらいで着いた

処置室で治療を始めた時には意識は全くなくて血液検査してCTをしステロイドの点滴をいれた

あとは意識がある時に内視鏡検査を受けさせたいがある程度、病名が定めることができた

病院に搬送してきて2時間ほど経った
やっと意識がしっかりしてきて
会話ができるようになった

「大丈夫か?」

「うん」


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