弱さを知る強さ
◎恭介◎
週明け、あやはの部屋に行くと実習に行く準備をしていた
まだ朝6:30
そんな朝早く出るって実習病院はどこなんだろう
「今日どこで実習?」
「秘密」
顔を背けて目を合わさない
「母性だろ」
「そうだけど...」
「実習病院言わないと行かせないよ」
「なんで?」
頑なに言わない
そしてなにか企んでいる顔
もうマイナスなこと考えているのがわかるようになってきた
「俺から逃げるだろ」
「ちゃんと検査したでしょ」
「場所だけ言えば、実習行ってもいい」
「...」
「言うか言わないかどっち?」
「...」
これはもうダメだ
今日実習行かせたら俺から逃げてまた姿を消す
そのために病院を言いたくないんだ
俺はそう確信した
「実習終わったらここに戻ってこい」
「えっ、無理
検査したし今日で退院でしょ
話が違う」
「その予定だったけど何か企んでるだろ
そんなやつ野放しにできない」
「...」
「実習終わったらここに戻ってこい
そして明日の朝ここから実習にいけ」
「...無理だって」
「じゃあ待ってるから」
「無理!金森先生待って!」
俺が部屋を出て行こうとしたら腕を掴んで止められた
「なに?」
「実習病院は◯◯病院」
渋々、病院の名前を言った
「病棟は?」
「...」
「もういいってここに戻ってこい」
「待ってってば
6階の産科病棟にいく」
「わかった、とりあえず終わったらここに戻ってくる、それは変わらない」
「なんで。言ったでしょ
記録もあるしもう勘弁して」
「19時にはここ集合
俺はお前の住所も学校名も実習病院もわかってる
自分のやりたいことやりたいならちゃんとここに戻って来い」
「...約束が違う、昨日頑張ったのに」
「じゃあな」
「ねぇわかったから
19時に戻るから今晩は家に帰らせて」
「何でそんなにここが嫌?
個室だしトイレもシャワーもついてる
自分の家とあんまり変わらないだろ」
「みんなに迷惑かけるから...」
「そう思うなら起きたままで点滴できるようになれ」
「...」
「なら親父のクリニックで点滴だけ打って帰宅させてやる」
「...無理だよ」
「なら夜、今まで通り寝るタイミングで点滴入れてやるからここに泊まれ」
「嫌だ...」
「どっちかだ、早く決めろ」
「...」
「何も思って迷惑って言ってるのか俺にはわからないけどせっかくここまで頑張ったのに無駄にするわけにいかない
正直に言え、このまま病気から逃げるつもりだったろ」
「...わからない」
「別に俺じゃなくていいから病気から逃げるな
他の医師がいいなら消化器の先生紹介してやる」
「...遅刻するから行く」
俯いたまま部屋から出た
◎