私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
蝶の柄がついた、可愛らしい薄紫色のカード。お店の雰囲気とぴったりだ。 でも申し訳ないけど、きっともう使うことはない。

「凛……さん」

その時、なぜか彼女が私の名前を呼んだ。驚きのあまり、私は「え…」と、小さな声を漏らす。

それを聞いた彼女はふっと、楽しそうに笑みをこぼした。

「冴島凛さんて、いうんですね」
「え……?」

今度はフルネームで呼ぶと、彼女は大きな瞳を、悪戯っぽく細めた。

受付で名前を書いたのだから、彼女が知っていて当然だ。頭ではそう分かっているのに、その完璧な笑みの奥にある真っ直ぐな瞳は、どこか見定めるような冷たい敵意を滲ませている。

怖くなった私は、思わず彼女の視線から逃げるように目を逸らした。

早く戻ってよ。どうして執拗に見つめるの?

沙羅さんの隣に、涼介の幻がちらついて仕方がないんだ。

その大きな瞳で涼介を見つめて、その薄い唇で彼にキスをして。その体で彼に抱かれる──。

嫌でもそんな生々しい光景が、頭の中に広がっていく。

「すみません、失礼します」

耐えきれなくなった私は、か細い声で告げると、くるりと彼女に背を向けた。

この場から一刻も早く逃げ出したい。その一心で一歩踏み出したその刹那、核心を突く言葉が、彼女の口から飛び出した。

「りょうが……その節は、大変お世話になりました」

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