私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
今日、何度目だろう。心が、ぐしゃりと握り潰されるような、大きな衝撃を受けたのは。涼介のことで、泣いてばかりだ。こんなに辛い恋がしたかったわけじゃないのに。
「なんかもう、疲れちゃった」
はぁっと、深いため息と一緒にもれた言葉は、偽りのない本音だった。
「やめろよ、もう」
「え?」
視線を上げると、一ノ瀬が熱を帯びた瞳で、私を見据えていることに気づいた。
「そう、だよね……」
一ノ瀬の言う通り、きっともう潮時。それでもなかなか諦めきれないから、苦しいのだ。
辞めろと言われて辞めることができたら、どんなに楽だろう。
「コーヒー、淹れなおすね」
暗い雰囲気を断ち切るように、私はわざと明るい声を出して立ち上がり、キッチンへと向かった。
ケトルに水を入れ、カチリと電源を入れる。戸棚からマグカップを二つ取り出し、ミルクと砂糖を用意していると、ふと、背後に人の気配がした。
振り返ろうとした、その瞬間だった。
背中から、今まで感じたことのない、大きくて温かい感触が私を優しく包み込んだ。
……え?
「いち……のせ?」
私の肩に彼の腕が、ためらいがちに、だけど、しっかりと回されている。耳元で、私のものではない、静かな呼吸の音が聞こえた。
何が、起こっているの? わけがわからず、私はマグカップを持ったまま、その場で置物のように固まってしまう。