私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
涼介を部屋へと促すと、私はキッチンへ向かい、コーヒーを淹れる準備を始めた。彼はいつもブラック。砂糖もミルクもいらない。
「どうぞ」
「ありがとう。可愛い部屋だね」
ローテーブルに置かれたマグカップの湯気が、二人の間を漂い、頼りなく立ち上っては消えていく。
さっきまでその席には一ノ瀬がいたのに……なんだか変な感じだ。
「結構、頑張ってコーディネートしたんだ」
「うん、凛らしい」
彼は私の言葉に小さく頷くと、カップに口をつける。
すると涼介が、少し言葉を詰まらせながら、切り出した。
「俺さ、沙羅の側にいることだけが俺にできる償いで、誠意なんだって本気でそう思ってたんだ。でも、違ったんだよ。俺、いつも凛のこと考えてた。心はずっとそこにないままだった。それに、沙羅は気づいてたんだ。最後の最後まで、あいつのこと、傷つけたんだなって……。出て行くときの、あいつの言葉が、かなりきいた」
カーテンの隙間から、通り過ぎる車のヘッドライトが、一瞬だけ部屋を横切る。その光に照らされた涼介の顔は、深い苦悩で歪んでいた。眉間に刻まれたシワが、彼の心の痛みを雄弁に物語っている。
「会ってみたかったって、言われた。沙羅さんに」
「そっか……プライドの高いあいつがな。沙羅の最後の嘘は、たぶん、俺への仕返しだったんだろうな」