私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
「一ノ瀬が、どうしたの?」
喉の奥に張り付いた言葉を一枚一枚、剥がすかのように、たどたどしく尋ねる。
穏やかだったはずの心の水面に、まるで石を投げ込まれたかのように、さざ波が立つのを感じる。
「あいつ、病院、辞めるって」
「え……?」
「アメリカの、IT企業に引き抜かれたらしい。それで、もう来週には日本を離れるって」
菜穂がためらいがちにスマートフォンの画面を私に見せる。そこには、健からの信じがたいメッセージが表示されていた。
【一ノ瀬、病院辞めるらしいぞ。なんでもアメリカの有名IT企業から直々にオファーがあったとかで。もう来週には渡米するって。あいつ、マジかよ】
アメリカ……来週、辞める。
そのあまりにも現実感のない単語が、私の頭の中をただぐるぐると回っていた。
ずっと私を側で支えてくれた人。どんな時も味方でいてくれた人。あの夜、私を抱きしめ「好きだ」と伝えてくれた人。その人がもう、いなくなる……。
カチャン、と持っていたスプーンが手から滑り落ち、甲高い音を立てた。
「凛……?」
「もう戻ってこないのかな」
「どうだろう……」
「会えなくなるってこと?」
私だっていずれはこの病院を去るのに、一ノ瀬がいなくなるのを知って胸は冷たく沈んでいく。
喉の奥に張り付いた言葉を一枚一枚、剥がすかのように、たどたどしく尋ねる。
穏やかだったはずの心の水面に、まるで石を投げ込まれたかのように、さざ波が立つのを感じる。
「あいつ、病院、辞めるって」
「え……?」
「アメリカの、IT企業に引き抜かれたらしい。それで、もう来週には日本を離れるって」
菜穂がためらいがちにスマートフォンの画面を私に見せる。そこには、健からの信じがたいメッセージが表示されていた。
【一ノ瀬、病院辞めるらしいぞ。なんでもアメリカの有名IT企業から直々にオファーがあったとかで。もう来週には渡米するって。あいつ、マジかよ】
アメリカ……来週、辞める。
そのあまりにも現実感のない単語が、私の頭の中をただぐるぐると回っていた。
ずっと私を側で支えてくれた人。どんな時も味方でいてくれた人。あの夜、私を抱きしめ「好きだ」と伝えてくれた人。その人がもう、いなくなる……。
カチャン、と持っていたスプーンが手から滑り落ち、甲高い音を立てた。
「凛……?」
「もう戻ってこないのかな」
「どうだろう……」
「会えなくなるってこと?」
私だっていずれはこの病院を去るのに、一ノ瀬がいなくなるのを知って胸は冷たく沈んでいく。