私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~

彼の横顔は痛みを必死に堪えるかのように固く強張っていて、まるで何かと戦うように、唇はぎゅっと結び引かれている。瞳は暗い夜の底を彷徨っているかのように、寂しさが滲んでいた。

そんな彼を目の当たりにして、私は言葉を失う。

「なんてな。向こう行っても頑張れよ」

すると、彼は重たい空気を一掃するように、鼻で笑った。いつもの彼らしい口調に、はっと我に返る。

「……うん、ありがとう。一ノ瀬もアメリカ行っても頑張ってね」

無理やり笑顔を貼り付け、彼の目を見つめる。

一ノ瀬は一瞬だけ、驚いたように目を見開いたが、すぐにいつもの仏頂面に戻ると「ああ」と短く返事をした。

お互い別の場所で頑張ろう。私も涼介と幸せになるから。

私は彼に背を向けると、溢れそうになる涙を必死に堪えながら、システム管理室を後にした。
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