私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
「凛のその怒った可愛い顔、目に焼き付けておこう」
「怒ってるんだから、可愛くないでしょ」
「凛は何しても可愛いよ」
涼介はすぐそういう、くすぐったくなるようなこと言う。
あいつは私が怒るのを見て、よく笑ってたのに。
……って、何でこんな時に、一ノ瀬のことなんか思い出してるんだろう。
頭の中の彼の存在を振り払うかのように、左右に思い切りぶんぶんと首を振る。
「凛、ここでいいよ」
搭乗を促す最後のアナウンスが、無機質に響き渡る。繋いでいた手を離すと、涼介が私の頭を優しくぽんぽんと撫でた。
すぐに追いかけると分かっているのにやはり「別れ」となると、急に哀しさが込み上げてくる。
「涼介、いってらっしゃい。待っててね」
「なぁ、凛」
すると突然、涼介が真剣な声音で私の名前を呼んだ。
それなのになぜか遠くを見つめていて、しかも困ったように頭を傾げている。
「どうしたの?」
そう尋ねれば、彼はゆっくりと私に視線を落とした。