私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
「は? あんたのボーナスなんて知らないし!」

あまりに自分勝手な言い分に、呆れて言葉を失う。

だけど文句を言いながらも、口元に小さな笑みが浮かんでいるのが、自分でも分かった。

もしかして不器用なりに、元気づけようとしてくれている?それはそれで調子狂うんですけど。

「あーあ、こっちはあんたのせいで昼休み台無し。せっかく一人でのんびりしようと思ったのに」
「それはすみませんでした」

一ノ瀬が、まったく心のこもっていない謝罪を口にする。その棒読みの口調がおかしくて、思わず吹き出した。

そのときだった。中庭の入り口から、迷いのない足取りでこちらへ向かってくるスーツ姿に、私は息を呑んだ。涼介だ。

あの日以来、彼からの連絡を全て無視し、院内でも姿を見れば逃げるように避けている。

もしかすると、痺れを切らして強行突破しにきたのかもしれない。

「一ノ瀬、お願い!」

パニックになりながら、隣に座る一ノ瀬の腕を咄嗟に掴んだ。

「隠して!」
「は?」

そう言うや否や、私は一ノ瀬の大きな背中の後ろに回り込み、身をかがめた。

「凛」

だがあっさり見つかってしまった。涼介は私たちの前に立つと、困惑した表情で呼びかける。

「LINE、見てくれた? 返事が欲しいんだ」

一ノ瀬の背中に隠れたまま、子供のようにぶんぶんと首を横に振る。

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