『愛してるの一言がほしくて ―幼なじみ新婚はすれ違いだらけ―』
(真理視点の真相)
私は紅茶をひと口飲んだ。
「あの子はね、昔からあなたの後ろに立ってた」
志穂の眉がゆっくり動く。
「……わたしの……?」
「ええ。
わたしがあなたの手を引いて、
あなたが泣きそうになるたび——
後ろで、そっと支えてた」
志穂の幼い日の顔が脳裏に浮かぶ。
泣き虫で、怖がりで、
でも誰より優しい子。
「でも……悠真くん、お姉ちゃんと話してるところ……
よく見てた……」
「志穂」
私は少し笑った。
その記憶も、彼女らしくて愛しい。
「あなたがいなくなるときだけよ。
志穂が緊張してたから、
“真理さんお願いします”ってお願いされただけ」
「え……?」
「わたしがいたら、
志穂が安心してあなたの後ろに隠れられるでしょう?」
志穂の目が、涙で潤んだまま見開かれた。
「それって……」
「そうよ。
あの子は昔から、
あなたを“守るべき人”だと思ってたの」
志穂は押し黙った。
その沈黙の意味が、
痛いほど分かった。
ずっと“姉を好きだ”と思い込んでいた相手が、
本当は自分ばかり見ていた。
その事実は、キュンと胸を揺らす。
私は、志穂の手をそっと包んだ。
「ねえ、志穂。
覚えてる? 小さい頃、あなたが木から落ちたとき」
「え……?」
「真っ先に駆け寄ったのはわたしでもなく、
お母さんでもなく——悠真くんよ」
志穂の呼吸が震えた。
「あなたの膝を見て、
青ざめた顔して……
泣きそうになってたわ」
「……そんな……」
「あなたを背負って走ろうとしたくらいよ?
まだ子どもで、
自分も転びそうだったのに」
私は小さく笑った。
「わたしはその横で、
“この子、本当に志穂のこと大事にしてるんだな”って思ってた」
志穂の目から、
また涙が一筋落ちた。
(ああ、この子……
本当に愛してるのね)
「志穂。
あなたが思っている以上に、
悠真くんはあなたを大切にしてる」
「でも……言ってくれないの……
好きって、一言……」
「言えないのよ」
私はそっと志穂の頬に触れた。
「あなたを大切に思うあまり、怖いの」
「……こわい?」
「“好き”と言った瞬間、
あなたの人生を最後まで責任を持って守らなきゃいけない——
あの子は本気でそう思ってる」
志穂は唇を噛んだ。
「わたし……
それでも……言ってほしい……」
「うん、言ってほしいわよね。
あなたは優しいから、
言葉がないと不安になる」
私は背中を軽く撫でた。
「でもね……
あなたのことを、本当に大切に思ってるのは——
間違いなくあなたの夫よ」
志穂の涙が、また静かに零れた。
「お姉ちゃん……」
「泣いていいわよ。
今日は、わたしが全部受け止めるから」
志穂は子どもの頃のように、
私の肩に顔を埋めて泣いた。
その涙は、
ずっと張りつめていた心を
ゆっくり溶かしていくようだった。
私は紅茶をひと口飲んだ。
「あの子はね、昔からあなたの後ろに立ってた」
志穂の眉がゆっくり動く。
「……わたしの……?」
「ええ。
わたしがあなたの手を引いて、
あなたが泣きそうになるたび——
後ろで、そっと支えてた」
志穂の幼い日の顔が脳裏に浮かぶ。
泣き虫で、怖がりで、
でも誰より優しい子。
「でも……悠真くん、お姉ちゃんと話してるところ……
よく見てた……」
「志穂」
私は少し笑った。
その記憶も、彼女らしくて愛しい。
「あなたがいなくなるときだけよ。
志穂が緊張してたから、
“真理さんお願いします”ってお願いされただけ」
「え……?」
「わたしがいたら、
志穂が安心してあなたの後ろに隠れられるでしょう?」
志穂の目が、涙で潤んだまま見開かれた。
「それって……」
「そうよ。
あの子は昔から、
あなたを“守るべき人”だと思ってたの」
志穂は押し黙った。
その沈黙の意味が、
痛いほど分かった。
ずっと“姉を好きだ”と思い込んでいた相手が、
本当は自分ばかり見ていた。
その事実は、キュンと胸を揺らす。
私は、志穂の手をそっと包んだ。
「ねえ、志穂。
覚えてる? 小さい頃、あなたが木から落ちたとき」
「え……?」
「真っ先に駆け寄ったのはわたしでもなく、
お母さんでもなく——悠真くんよ」
志穂の呼吸が震えた。
「あなたの膝を見て、
青ざめた顔して……
泣きそうになってたわ」
「……そんな……」
「あなたを背負って走ろうとしたくらいよ?
まだ子どもで、
自分も転びそうだったのに」
私は小さく笑った。
「わたしはその横で、
“この子、本当に志穂のこと大事にしてるんだな”って思ってた」
志穂の目から、
また涙が一筋落ちた。
(ああ、この子……
本当に愛してるのね)
「志穂。
あなたが思っている以上に、
悠真くんはあなたを大切にしてる」
「でも……言ってくれないの……
好きって、一言……」
「言えないのよ」
私はそっと志穂の頬に触れた。
「あなたを大切に思うあまり、怖いの」
「……こわい?」
「“好き”と言った瞬間、
あなたの人生を最後まで責任を持って守らなきゃいけない——
あの子は本気でそう思ってる」
志穂は唇を噛んだ。
「わたし……
それでも……言ってほしい……」
「うん、言ってほしいわよね。
あなたは優しいから、
言葉がないと不安になる」
私は背中を軽く撫でた。
「でもね……
あなたのことを、本当に大切に思ってるのは——
間違いなくあなたの夫よ」
志穂の涙が、また静かに零れた。
「お姉ちゃん……」
「泣いていいわよ。
今日は、わたしが全部受け止めるから」
志穂は子どもの頃のように、
私の肩に顔を埋めて泣いた。
その涙は、
ずっと張りつめていた心を
ゆっくり溶かしていくようだった。