水色に混ざる夏
駄菓子屋に着くと、おばちゃんはちょうど店先に居て、雨で流れ着いた落ち葉を掃除していた。

「こんにちは〜。あの、ちょっと聞いてもいいですか?」

透くんが一歩前に出て、声をかける。

「お店、なくなるって噂を聞いたんですけど、本当なんですか?こんなこと聞くのも、なんですが……なんだか、この場所がなくなるなんて、想像できなくて」

おばちゃんは作業の手を止めて、にこっと笑った。

「あら、そんな風に思ってくれて、うれしいわね。大丈夫、あたしが元気なうちは、続けるつもりよ。でも、年寄りの健康なんて綱渡りだからねぇ……」

「そんなこと……きっと、大丈夫ですよ。毎年夏のかき氷、楽しみにしているのでよろしくお願いします」

「ありがとね、そう言ってくれると、やる気がでてくるってもんだよ」

透くんが、少しだけ顔を曇らせる。
曖昧な返事……でも、それ以上のことは聞けなかった。おばちゃんの言う通り、ずっと続けるって、言い切るのは無理だから。

おばちゃんと離れて中庭に来た時、透くんが、ぽつりとつぶやいた。

「……年齢のことを考えると、あんな風にしか言えないよな」

わたしもそれに、うなずくしかなかった。
元気な内は続ける……それ以外に、わたし達は一体どんな言葉を期待していたんだろう。
< 29 / 38 >

この作品をシェア

pagetop