君のとなりで、恋をする
人混みの中、大和は拳を握りしめたまま動けなかった。

すぐ近くにいるのに、詰まった車内が、その一歩を許してくれない。

視線の先では、結城先輩が翠のすぐそばに立っている。

庇うような位置。

自然で、当たり前みたいな顔。

喉が詰まって、声も出ない。

横で友達が、


「やべー、今の!」


と小声で笑う。

その軽さが、やけに遠く、耳障りに響いた。


(……また結城さんかよ)


胸の奥がざらついて、じっとりとした汗が額を伝う。

握った拳に、爪が深く食い込んだ。






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