君のとなりで、恋をする
──電車を降りると。


混雑から解放されたホームで、私は大きな荷物を抱えていた。

部活で使う練習用のバッグ。

ユニフォームやビブス、水の入ったボトルまで詰め込まれていて、持ち上げるたびに腕が重くなる。


(今日、これ持ってくるって言ったの、私なんだけど……重い……)


階段を前に、思わず足が止まりかけた、その時。


「貸して」


結城先輩はそれだけ言って、私の腕からするりとバッグを奪い取る。


「えっ、でも……!」

「いいから」


短く、迷いのない声。

軽々と肩に担いで歩き出す背中が、当たり前みたいに前へ進んでいく。

そのすぐ横を歩く形になってしまって、言葉が出なかった。


(い、いいのかな……本当に……?)


ただ隣を歩くだけで、視線が集まっているのがわかる。

後ろからひそひそ声が追いかけてきて、背中がむず痒くなる。


「今の見た?」

「やばくない? 一年の子、カバン持ってもらってたよ」

「マネの子でしょ?」


断片的な言葉が風みたいに耳に触れては、胸の奥に落ちていく。


(……結城先輩って、
 やっぱりすごい人気なんだな……)


そんな当たり前のことが、今はいつもより重く響いた。

その隣を歩く自分に、居心地の悪さと、小さな誇らしさが同時に混ざっていく。

うつむきそうになる顔を、必死にまっすぐ前へ向けた。






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