君のとなりで、恋をする
「翠、なんか今日顔赤くない?」
隣に座った莉子が、いつもより少しだけ慎重な声で覗き込んでくる。
「昨日の結城先輩、マジでかっこよかったらしいじゃん。今も思い出して心臓ヤバいでしょ?」
「ち、ちがっ……! そんなんじゃないから!」
必死に否定するけど、声が裏返ってしまう。
自分でも説得力がないのがわかって、余計に慌てた。
莉子は「ふふ」と少し笑ったあと、今度は真剣な目で問いかけてきた。
「ねぇ、翠は結城先輩のこと、どう思ってんの?」
心臓がドクンと跳ねた。
答えようとしても、すぐには言葉が出ない。
さっきまで教室中の視線を浴びていたせいで、喉の奥がきゅっと詰まる。
小さく息を吸って、震える声でやっと言えた。
「……わかんない。でも……憧れっていうより、ちょっと違う気がしてきて……」
言葉にした瞬間、自分でも驚いた。
(今……何て言ったの、私)
口に出したその感覚が、胸の奥で何かをほんの少し動かした気がした。
ふわふわしていた気持ちが、輪郭だけ少し色づいたみたいで、余計に恥ずかしくなる。
莉子は一瞬目を丸くし、それからにっこり笑った。
「そっか。うん、それでいいと思うよ」
それ以上、無理に聞いてこなかった。
「困ったら言いなね」と、小さく一言だけ付け足す。
その優しさに、少しだけ肩の力が抜けた。
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