君のとなりで、恋をする
教室に入った瞬間、ざわざわとした空気が肌を刺した。
机に座っているクラスメイトだけじゃない。
廊下からのぞき込む他クラスの生徒、わざわざ見に来たような上級生の姿まで。
視線が一斉にこちらへ向かっているのが、はっきりわかった。
(え……なに……?)
椅子を引こうとした瞬間、ひそひそとした声が耳に届く。
「ねえ、長谷川って昨日の電車の子だよね?」
「結城先輩に守られてたって!」
「やばくない? てか普通に可愛いじゃん」
「写真撮ってた子いたよね?」
私の名前と「結城先輩」という単語が、何度も混ざり合って飛び交う。
「ち、違っ……!」
慌てて否定しかけて、思わず口をつぐむ。
何がどう“違う”のか、自分でもうまく言えない。
その仕草にまた笑い声が起きて、胸がぎゅっと縮んだ。
(悪いこと、してないのに……)
教科書を開く手に少し力が入り、ページの端がくしゃっと折れた。
⸻