君のとなりで、恋をする



──放課後。


教室に残った空気は、昼間より少し落ち着いているのに、噂だけはまだ残っていた。


「長谷川って、やっぱ結城先輩のガチなんじゃね?」


クラスの男子の軽い声に、周囲がまたざわつく。

大和は笑って「さぁな」と軽く返す。


「お前、長谷川と同じクラスだろ? なんか聞いてね?」

「マネやってるし、絶対なんかあるって」


好き勝手に飛び交う言葉。

大和は、冗談を受け流すみたいな顔で肩をすくめる。

けれど、机の下で握る拳には、強く力がこもっていた。

指先が白くなるくらい、ぎゅっと握りしめたまま。

胸の奥で渦巻くものは、もう隠しきれない。


(……絶対に振り向かせる)


心の中で、静かに、しかしはっきりと繰り返す。

結城さんに勝てる保証なんてない。

むしろ、比べれば比べるほど、差を思い知らされる。

それでも、譲れない想いがある。

翠ちゃんの笑顔を、誰よりも近くで見たい。

困っているとき、一番に気づきたい。

支えるのは自分だ――。

そう決めた瞬間、大和の瞳は、さっきまでの冗談めいた色を消していた。

窓の外の夕焼けが、その横顔を少しだけ赤く染める。


(負けたくねぇな)


心の中だけで呟き、もう一度拳を握り直した。






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