君のとなりで、恋をする

──体育館の端。



結城先輩は、キャプテンの横で後輩たちに指示を出していた。

タオルで汗を拭い、冷静な声でプレーを直し、位置を修正していく。

三年の視線を受けても、必要な一言だけを落ち着いて届けるその姿は、いつも通りで、だからこそ目が離せない。

周囲にとっては何気ない一場面。

けれど、私にとっては――。


(あんなふうに、自然に声をかけてくれる。
 私なんかの小さな失敗も、笑って受け止めてくれる。

 だから……余計に、心臓が痛いくらい騒ぐんだ)


視線を外そうとしても、気づけば追ってしまう。

名前を呼ばれるたびに、胸が跳ねる。

呼吸の仕方さえ忘れて、ペン先が紙の上で小さく震える。

噂が広がっても、誰に何を言われても。

体育館の出入り口で交差する足音やボールの転がる音に紛れて、みんなの声は遠くなっていく。

それでも、たった一人の声だけは鮮明に響いたまま――頭の中は、結城先輩でいっぱいだった。




____



< 81 / 140 >

この作品をシェア

pagetop