君のとなりで、恋をする
──体育館の端。
結城先輩は、キャプテンの横で後輩たちに指示を出していた。
タオルで汗を拭い、冷静な声でプレーを直し、位置を修正していく。
三年の視線を受けても、必要な一言だけを落ち着いて届けるその姿は、いつも通りで、だからこそ目が離せない。
周囲にとっては何気ない一場面。
けれど、私にとっては――。
(あんなふうに、自然に声をかけてくれる。
私なんかの小さな失敗も、笑って受け止めてくれる。
だから……余計に、心臓が痛いくらい騒ぐんだ)
視線を外そうとしても、気づけば追ってしまう。
名前を呼ばれるたびに、胸が跳ねる。
呼吸の仕方さえ忘れて、ペン先が紙の上で小さく震える。
噂が広がっても、誰に何を言われても。
体育館の出入り口で交差する足音やボールの転がる音に紛れて、みんなの声は遠くなっていく。
それでも、たった一人の声だけは鮮明に響いたまま――頭の中は、結城先輩でいっぱいだった。
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