君のとなりで、恋をする
「翠?」


声にハッとして振り返ると、隣で莉子が弁当を広げていた。


「なにボーッとしてんの。顔、真っ赤だよ?」

「えっ!? ち、ちが……!」


慌てて否定するけど、胸の鼓動は誤魔化せない。

莉子はにやっと笑いながら、箸を口に運んだ。


「最近ずっとだよね。……やっぱり結城先輩のこと、気になってんじゃん」

「……わかんない。でも、めちゃくちゃ気になって……。どうしていいか、わかんないの」


口からこぼれたのは、本音だった。

莉子は一瞬だけ驚いた顔をして、すぐに笑った。


「ふふ、ついに自覚してきたかって感じだね」


莉子は軽い口調で言ったけれど、その言葉の奥にはどこか優しさが滲んでいた。


「恋をしてる翠、なんかちょっと雰囲気変わったよ。顔が柔らかくなった」

「え……そうかな」


自分でも気づかないうちに、彼の名前を考えるだけで胸が温かくなる。


「恋ってさ、相手のこと思うだけで一日中浮かれるし、落ち込むし。でも、そういうのが楽しいんだよ」


莉子の何気ない言葉が、少し羨ましかった。

彼女はもう“恋を知っている人”で、私はまだその入り口に立ったばかり。


(私も、こんなふうに誰かを想えるのかな)




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