続・幼なじみの不器用な愛し方
肩を掴む手が、声が、震えていた。


「なぁ。頼むから……嘘って言ってくれよ」


今にも降り出してしまいそうな雨の気配に、わたしは叫び出したくなった。


すぐにでも嘘って言いたい。ごめんねって言って、この手を強く握りたい。

惜しみない愛情をくれるところが好き。仕事に対して真面目なところが好き。この俳優さんかっこいいって言ったら、未だに拗ねるところが好き。ピーマンが食べられるようになったって偉そうにしちゃうところが好き。

有斗のイタズラな笑顔が好き。ちらりと覗く八重歯が好き。いつだって優しく、力強く抱き締めてくれる腕が好き。眠いと少し掠れる声が好き。


有斗の全てが、こんなにも好きなのに。


頭の中に、昨夜の有斗の言葉が蘇る。

『不安にさせてごめん。不要な苦労ばっかかけて、本当にごめん。でも俺、もっと頑張るから。美月を不安にさせないように、誰にも、何にも文句なんか言わせねーくらい結果出してみせるから』

有斗は気付いてない。わたしと同じくらい仕事が大切になっていることを、引け目に感じていることに。

有斗が仕事にのめり込めばのめり込むだけ、わたしにかかる負担が大きくなると思っているのだろう。それを申し訳なく思っているのだろう。

だからこそ、ただでさえたくさんのものを背負っているところに不必要なものまで背負おうとした。全力で頑張っている今以上に、頑張るなんて言って。


そんな背中に──誰が子どもまで乗せられる?
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