I 編む
会社が入っているテナントビルはいわゆるオフィス街にある。
大規模な再開発が行われたものの、由緒ある土地柄なのでところどころに古い建物が残っている。
会社の近くに、ビルの谷間に挟まれるように小さな神社があるのだ。
二人で向かう道すがら、たいした会話はなかった。
「五円玉はご縁がありますようにって願掛けするけど、五十円だから五重の縁があるかな」
彼のそんなつぶやきが耳に残った。
夜の神社は他に人の気配がなくひたすら静まりかえっている。正直、一人だったら少し怖かっただろう。
賽銭箱に、ちゃりんと聡が五十円玉を投げ入れた。
並んで二礼二拍手一礼を済ませる。
「なにをお願いしたの?」
参道ともいえない境内の短い道を戻りながら、彼がささやいた。
早くもタメ口かとちらっと思うけど、相手の方が年齢も立場も上なので不快ではなかった。
「欲張りなので『願いごとが全部叶いますように』ってお願いすることにしてるんです」
夜闇のなかで、彼がうっすらと笑う気配が伝わってくる。
大規模な再開発が行われたものの、由緒ある土地柄なのでところどころに古い建物が残っている。
会社の近くに、ビルの谷間に挟まれるように小さな神社があるのだ。
二人で向かう道すがら、たいした会話はなかった。
「五円玉はご縁がありますようにって願掛けするけど、五十円だから五重の縁があるかな」
彼のそんなつぶやきが耳に残った。
夜の神社は他に人の気配がなくひたすら静まりかえっている。正直、一人だったら少し怖かっただろう。
賽銭箱に、ちゃりんと聡が五十円玉を投げ入れた。
並んで二礼二拍手一礼を済ませる。
「なにをお願いしたの?」
参道ともいえない境内の短い道を戻りながら、彼がささやいた。
早くもタメ口かとちらっと思うけど、相手の方が年齢も立場も上なので不快ではなかった。
「欲張りなので『願いごとが全部叶いますように』ってお願いすることにしてるんです」
夜闇のなかで、彼がうっすらと笑う気配が伝わってくる。