【第一部完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
「セレスティア」

 そう声をかければセレスティアが弾かれたように顔を上げ、輝くような満面の笑顔で駆け寄ってきた。

「おとうしゃま、どうしたの? おしごとは? もうおわり?」

「いや、終わりではないが、休憩がてら様子を見にきた。モーリスから、光る不思議な薬草を育てていると聞いたのだが、見せてもらえるか?」

「うん! これだよ!」

 セレスティアが指差したのは、細い茎に無数の小さな葉がついた植物。
 アルフレッドには、先程モーリスが「オレガノ」と言っていた草と、ほぼ同じに見えた。

「光ってはいないな」

「あっ、おひさまで、ひかりがみえないの。こうしたら、キラキラするよっ!」

 セレスティアがかぶっていた麦わら帽子を脱ぎ、日差しを遮るように薬草の上にかざした。
 すると、なんの変哲もなかった草が淡く光り輝きはじめる。
 
 このような植物は見たことがない。

 ──霊的なものへの干渉力がある薬材が必要。

 霊脈説を唱える学者の言葉がふと思い出された。

「セレスティア、この薬草はいつから、どうやって育てたんだ? 種か? それとも苗か?」

「え? えーっと、えーっと……わかんない!」

「分からない?」

「うん! いつのまにか、はえてて、みずをあげたら、たくさんふえた!」

「……そ、そうなのか」

「こっから、ここまで。ぜーんぶ、ホシツユクサだよ」

「ホシツユクサ?」

「このくさのナマエ。つけたの」

 セレスティアによると、それなりに広い花壇の四分の一が、今やこの謎の光る薬草──ホシツユクサらしい。
 育てはじめてまだ日も浅いはずだが、恐るべき繁殖力である。

「この薬草を少しもらってもいいか?」

「うん! まっててね!」

 頷いたセレスティアは、根を傷つけないよう慎重にスコップで土を掘り返し、モーリスが持ってきた鉢植えに一株薬草を植え替えた。

「おとうしゃま、どうぞっ!」

「ありがとう。俺は仕事に戻るが、あまり根を詰めすぎないように。こまめに休憩を取り、水分補給も忘れずにな」

「はいっ! おしごと、がんばってね!」

 鉢植えを受け取ったアルフレッドは頷き返し、建物に向かって歩き出す。

 娘の笑顔に癒され、声援に活力をもらったからか、その足取りは先程までとは別人のように軽やかだった。
 書斎へ戻ったアルフレッドは、すぐにホシツユクサを領都の研究支部へ送るよう、ジェラールに頼んだ。



 ──事態が動いたのは、それから三日後の真夜中のことだった。



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