野いちご源氏物語 四六 椎本(しいがもと)
(かおる)(きみ)(ろう)女房(にょうぼう)(べん)(きみ)をお呼びになった。
先日の昔話のつづきをおさせになる。
月の光が明るいので、(すだれ)の向こうにいらっしゃる薫の君のお姿が、お部屋のなかからよく見える。
それがあまりにお美しくて、姫君(ひめぎみ)たちは気恥ずかしさのあまりお部屋の奥に隠れてしまわれた。
薫の君はそちらへもお話しかけになる。
色めいたお話ではなく、しみじみとしたお話をゆったりとされるから、大君(おおいぎみ)がときどきお返事をなさる。

匂宮(におうのみや)様がご執心(しゅうしん)の姫君たちだというのに>
ご自分のなさっていることに、つい苦笑してしまわれる。
<私はやはり変わり者だ。(はち)(みや)様は私が姫君のどちらかと結婚することをお(のぞ)みなのだろう。あれほど分かりやすくお許しくださったのに、すぐに自分のものにしようとは思われない。かといって辞退したいわけでもない。こんなふうにしみじみとお話をしていたいのだ。しかしどうだろう。季節の花や紅葉(もみじ)の話題で心を通いあわせることができる貴重な相手なのだから、やはり他の男にとられてしまったら(くや)しいだろうな>
もうすでに姫君たちをご自分のものだと考えていらっしゃるみたい。
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