野いちご源氏物語 四六 椎本(しいがもと)
年が明けると、やっと少し暖かい日差しが出てきた。
川の氷がとけていくのをご覧になっても、
<まさか新春(しんしゅん)まで生きながらえるとは>
と、姫君(ひめぎみ)たちは情けなくお感じになる。

山寺の阿闍梨(あじゃり)から、新年のご挨拶(あいさつ)山菜(さんさい)が届いた。
(ゆき)()けが始まったからこそ()れる山菜は、明るい春が来たことを象徴(しょうちょう)する食材なの。
女房(にょうぼう)たちは精進(しょうじん)料理にして仏様にお(そな)えしながら、
「寂しい山里(やまざと)ですけれど、植物で季節が感じられるのはよいものですね」
と話している。
姫君たちはとてもそんなお気持ちにはなれない。

父宮(ちちみや)様が山寺で修行(しゅぎょう)なさっていて、私たちのために山菜を採ってくださったというなら、うれしく思えたでしょうにね」
「こちらからは川近くの山菜をお届けしたでしょうに。春の生命力あふれる食材も、父宮様に差し上げられないのでは、採ったところでどうしようもありません」
ご姉妹で寄りそいながら日々を過ごしていらっしゃる。
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