恋愛期間0。彼の毒はスイーツより甘かった。(仮)
「お姉ちゃん、動画見たよ! 綺麗になってたね! 同行者って男の人?」
「車上生活辞めるんなら、さっさと帰ってこい、見合いの日取り決めてやるから」

 妹と父の声がスマホから割れるように響く。
 背後で片付けをしていた塩田が、無言で私に電話に出させろ、と手で合図してきた。
 電池切れそうなスマホをドキドキしながら渡した。

「はじめまして。うみさんのパートナーの塩田と言います」
 
 らしい言い方に、ちょっと不満を覚える。
 それは仕事上の付き合いと取れなくもない。キスしておいてそれだけなの?

「もう旅は辞めます。実家にはいずれ顔を出すと思います」

 それを何であんたから報告されなきゃいけないんだ! と父の怒鳴り声が聞こえた。
 カミナリ親父かよ。
 こんな癇癪持ちじゃなかったのに、歳のせいかと隣で溜息をついていると、塩田はそんな私を見ながら話を続けた。

「俺、うみさんと結婚しようと思ってるので。挨拶に行きますから見合い話は断っておいてください」

 交際もスキンシップもすっ飛ばした塩田の決意は、私も両親も大いに驚かせた。










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