渋谷少女A続編・山倉タクシー

なにぃ?逃げるぅ?

おっつけ親子連れなのだろうが仮にそこにDVがあろうとも赤の他人の我々が詰問することなど出来ようか。黙って見送るしかなかった。それを顎をしゃくって示しながら山倉が云う。「今日日ああいうのが増えたな。DVの雰囲気がプンプンするよ。あれが客で車内にいるんだったら俺もそれとなく事情を聞くんだがな。まあ、仕方ないさ」私も同意するしかない。しかしどうにも女の子の目が気になって仕方がなかった。いつか、どこかで見たような気さえするのだ。しかし山倉ならともかくプータロー然とした私が何かを装って尋ねようものなら大変だろう。「何だ、お前は?!」そう威嚇されるに違いない。そうと諦めて山倉にフェアウエルの挨拶をしようとしたら今度はその山倉の目が気になった。最前の言葉とは裏腹な、俺を詰問するような色をそこに宿している。『おい、いいのかい?田中さん、女の子放って置いて』とでも云うような…?そしてこちらの目にも、いつか、どこかでお目に掛かったような気がするのだ。些かでもそれを凝視したあと私は首を振るような仕草をしてから「うん、そうだね。まあ、とにかく、今日はありがとうございました。いずれ職でも決まったらまた報告させてもらうから。じゃ」と云ってお辞儀する。山倉も顔に笑顔を戻して「ああ、それじゃ。とにかくさ、頑張ってよ。近い内にまた会おう」と言い残して窓を閉め2人連れを追うように信号に向かって走って行った。その親子連れ(?)は信号を直進し山倉は右折して行った。女の子が後ろを振り向いて私を見たような気がする。はたして信号の先は隅田川の土手堤だ。まさか…と危惧しながら、その女の子を気づかうように、またあとを追うように、しかし結局のところ私は同方向なる家路へと着いたのだった。

【なにぃ?逃げるぅ?…と詰問するような山倉の視線(絵は人種も違うし場違いだが雰囲気が合うので拝借した)from pixabay, byAristalさんの作品 】
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