渋谷少女A続編・山倉タクシー

爺さん2人、格闘する

しかし件の長、年にわたる(何と20年以上!)ストーカー災禍のおかげで8年ほど前にとうとう私はガンを患い(胆管ガンだった。胃とすい臓、十二指腸の一部も切除した。切除した胃の代わりに腸を一部切り取ってつないであるのだ。手術は9時間に及び正真正銘命の危機だった)、以後はバランスがいいどころかちょっとした弾みで身がこけてしまうような身となっていたのだ。ここでも同様だったがしかし私は倒されても必死に男の足にすがりついて放さない。「野郎!」とばかり山倉と対峙していた男が加勢に降りて来ようとしたが「おいおい、お前の相手はこっちのクモ助さんだよ」と云って男の腕をつかむ。再び「野郎!」と叫びざま山倉めがけて男が殴りかかるが山倉はひょいひょいと器用に身をかわして(さきほどの私と違って)男のパンチを一発も身にあびない。方や私の方は蹴られたり殴られたり悲惨だったがどうでもダンベルを川底に沈めさせる分けには行かず、必死になって男の身体にすがりついていた。するうちにウ~とばかりパトカーのサイレンが一度鳴って堤上の女性が「パトカーが来たわよ!止めなさい!」と大声を出してくれた。
「おい、止めろ!もういい。こっちへ戻って来い!」と山倉とやり合っていた男が私を蹴っていた男に声をかける。その男は「痛っ(いてっ)」と一声発してから私に加勢に来てくれていた今1人の女性を押しのけようとする。しかし最前ビアクと呼ばれたその東南アジア系の女性は「てめえ、この野郎」と罵倒しては男を蹴り上げるのを止めない。「ビアク!もう止めて!警察が来た」堤上の女性の声でようやく蹴るのを止めた。「おお、痛(い)てえ。このアマ…」と男の方は毒づきながらも応戦はせず、私を振り払ってから足を引きずって堤の上へと戻って行く。
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