×されるはずが、溺愛される件について
「はい」とは返事をしたものの、いまいち納得できなかった。治せるのだから治すのは当然で、別に誉められることでもないと思っている。

「誰にもできることじゃない。皇帝は皇室の評判がうなぎ登りだと喜んでいるぞ」

 リーナが回復してからひと月あまり、彼女は身分を厭わず魔獸が残した傷がある者全員の治癒をした。

 皇帝が宮殿の庭園広場を開放を許してリーナが治療にあたり、その様子を見に来る市民たちもいて、最後のひとりを傷が治った後は歓声が上がった。

 誰かに喜んでもらえたのがうれしかった。

 これでようやくレオに選んでらった恩返しができたと。

 なにしろ今まではミスティアでもここに来てもお荷物のように後ろ指を指されてきた。それが感謝される存在にまでなれたのだから。

「リーナ、聞こえるか?」

「はい」

〝皇太子妃万歳〟

 左からも右からも聞こえてくる。
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