夏と先生と初恋。
トイレに行くついでのお父さんが心配して声をかけてくれたんだろう。



「うん。もう寝ようと思ってたところ」



…嘘だけど。



「そうか。早く寝るんだぞ」


「はーい」



最近は毎日気がついたらこんな時間になっている。


寝なきゃいけないとはわかっているけれど、どうしても何もしないではいられない。


今のままじゃ絶対だめなのに、呑気に寝てていいの?


このままじゃ、落ちるよ?


誰かに、そうささやかれているような気持ちになる。


…あと、ちょっとだけ。


これだけ聴いたら、寝るから。


もっと、頑張らないと。




✳︎ ✳︎ ✳︎




「あと3分ー」


「あーもうやめたい!」



吹奏楽部は、体力づくりのために毎週月曜日の部活の時間にグラウンドでランニングをする。


ペースは人それぞれで10分間走り続ける。


真夏は本当にきつい。


まだ6月で気温はそこまで高くない。


でも6月だからこそ、湿気の多いジメジメした空気が気持ち悪い。



「終了!」



号令とともに走るのをやめて歩き始める。
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