部長と私の秘め事
 ドキドキしながらベッドの上で待っていると、それほど待たずに尊さんが来た。

「待たせて悪いな」

「いいえ」

 彼は何も言わないけれど、私が恥ずかしくないように気を遣ってくれたのは分かっている。

 でもひねくれた人だから、指摘してお礼を言えば「無粋だな」と言われてしまいそうだ。

 だから彼のさり気ない優しさは、そのまま受け取っておく事にした。

 尊さんはバスローブのベルトを解き、ベッドの上に乗る。

「ん」

 そして、私の手にポンとブラウンの箱を置いた。

「へっ?」

 エッチが始まると思っていた私は、いきなりプレゼントを渡されて声を漏らす。

 そして手にある箱を見て、思わず恐れおののいてしまった。

 ブラウンとグレーが混じったような色味の箱には、シャンパンゴールドの字で超高級ハイジュエリーブランドのロゴが刻まれていた。

「もっ、もらえません! 何で!?」

「クリスマスだろうが」

「あっ、やっ、そうだけど……!」

 私も尊さんにクリスマスプレゼントを用意していて、明日の朝にブランド物のネクタイを渡そうと思っていた。

 フライングされた……。いや、そうじゃなく。

「ていうか、もらえないって言われても困るよ。俺がつける訳にいかねぇし」

「そりゃそうですけど……」

 私は溜め息をつき、オレンジのリボンが掛かった正方形の箱を見つめる。

「じゃ、じゃあ……見るだけ……」

 緊張しながら箱を開くと、中にはシンプルなシルバーのペンダントがあった。

 シンプルと言ってもリング状のチャームにはブランドの名前が刻まれていて、一目見れば超高級品だと分かる代物だ。

 デザインはシンプルでも、チャームの側面にはメレダイヤがびっしりついている。

 うう……、幾らするんだろう。

 ていうか、先日のハイジュエリーもだし……。

「そういうの似合いそうだと思って。普段着ている服もクール系が多いし、ピンクゴールドとか可愛い系よりは、シルバーのほうが身につけやすいかな、って」

「……あ、ありがとうございます……」

 そういうところを見て、プレゼントを選んでもらえたのは嬉しい。

「つけてやるよ」

 尊さんはそう言って、ペンダントを手に取る。

「髪、前によけて」

「はい」

 ペンダントをつけてもらうだけなのに、物凄くドキドキする。

 私はロングヘアをうなじから左右に分け、胸の前に垂らした。

「……ほっせぇ首」

 それを見て彼がボソッと呟いたのを聞き、私は俯いたままカーッと赤面する。

 首元で彼の手が動き、尊さんがあの大きな手で小さな留め具を弄っているのだと思うと、ニヤニヤしてしまう。

 おまけにくすぐったくて、つい首をすくめてしまった。

「ん」

 ペンダントをつけてくれた尊さんが、シャラッとチェーンを撫で、私の髪を背中に撫でつけた。

 顔を上げると、優しい顔で微笑んだ彼がいる。

「似合うじゃねぇか」

 そう言って、尊さんは私の鎖骨の下にあるチャームを、ポンと弾ませた。

「あ……、ありがとうございます……。わっ! ……と」

 次の瞬間、いきなり尊さんがチャームを摘まみ、軽くチェーンを引っ張ったので、私は慌てて前屈みになる。

 こんな高級アクセサリー、もらって早々壊せない!

 私は必死に前のめりになり、最後には四つん這いになった。

 そんな私を見下ろし、尊さんは悪い顔で笑う。

「首輪」

「…………は?」

 いきなりそう言われ、私は目を見開いて顔を上げる。

「これをつけてる限り……、いや、持ってる限り、お前は俺のもんな」

「事後報告!」

 思わず突っ込んだ私を見て、彼はクツクツと笑って額にキスをしてきた。

「あー……、でもこういう条件出すなら、もっと高いやつにすれば良かったな」

「十分です! お願いだから高い物買わないで!」

 私は尊さんの手を両手で握り締め、ヒンッ! と泣きついた。

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