部長と私の秘め事

誕生日三日目

 翌朝はそれぞれの部屋での朝食となり、私――、上村朱里と尊さんはゆっくりめに起きて、二人とも和食のご飯を楽しんだ。

 メニューにおかもちと書かれてあった通り、小鉢類は取っ手のついた木の箱に収まっている。

 二段重ねのおかもちに、ぎっしりとおかずが詰まっているので、私は朝からご機嫌で記念写真を撮り、白米をお供に綺麗に盛られたおかずを食べていった。

「今日の予定はどうなってるんですか?」

 食後、私は丈の短い黒のパフスリーブに、ワイドデニムを合わせて髪を纏める。

 尊さんは「腹出しルックか……」とおっさんみたいな事を言っていたけれど、自称おっさんなので放っておく。

「西口にマッサージの店があるから、そこでマッサージをやってもらって、身軽になったところでプラネタリウム。そのあと飯食って解散だ」

「マッサージやったー! でもそのあとのプラネタリウムで寝そうな気がします」

「疲れてるんなら、寝てもいいと思うけど。……いびきはかくなよ?」

「かきません! それにプラネタリウム代勿体ないから、頑張って起きます!」

 ムン! と気合いを入れると、尊さんはクスクス笑って私の頭を撫で、「頑張りな」と言った。





「恵、おはよ~!」

 チェックアウトの準備ができてロビーに向かうと、ほどなくして恵と涼さんが現れた。

 今回のプレゼントでもらった物は、タクシーでマンションまで荷物を運んでもらい、マンションのコンシェルジュさんが受け取って預かってくれるみたいだ。

 恵たちのほうは言わずもがな、秘書の上条さんが荷物を運んでくれるそうだ。

「お、おはよ……」

 白いハイネックのノースリーブサマーニットに、ワイドデニムを穿いた恵は、私を見ると一瞬目を泳がせる。

「デニムおそろだね」

「うん」

「涼さんとエッチした?」

「うん……、ん!?」

 恵は素直に頷きかけ、ギョッとして目を見開くと、真っ赤になって周囲を見回す。

 尊さんと涼さんはチェックアウトの手続きをしていて、今のやり取りを聞いていない。

 ホッと胸を撫で下ろした恵は、咳払いをして小さな声で言う。

「今のナシ!」

「え~? どうして~?」

 ニヤニヤして恵の腕をツンツンすると、脇腹に鋭い一撃をもらった。

「どぅふっ!」

 くすぐったくて身をよじらせると、恵は毛を逆立てた猫のように「ふーっ」と鋭く息を吐く。

 そのあともイチャイチャしていると、精算を終えた二人がこちらにやって来た。

「相変わらず仲がいいね。嫉妬しちゃう……」

 無地の白Tにデニムという、とてもシンプルな格好の涼さんに言われ、私は得意げな顔をして恵と腕を組む。

「中学生からの仲ですから」

「いいなぁ……。俺も中学生から恵ちゃんとやり直したい」

 ショボンとして言った涼さんに、恵が突っ込む。

「六歳年上だから、同じ学校でもかすらないじゃないですか。仮に中高一貫校だとしても、私たちが中一の時、涼さんと篠宮さんは大学一年生ですよ」

「恵ちゃんがつれない……。制服の恋愛をさせてくれない……」

 両手の人差し指をツンツンさせる涼さんを見て、尊さんが爆弾を放り投げた。

「プライベートで学生コスプレでもしたら?」

 すると涼さんはハッと顔を上げ、恵はシュバッと両腕で顔の前にバツを作る。

「早い……。プロの技」

 私が呟くと、涼さんはみるみるションボリしていく。

「いいよ、そのうち丸め込んでみせるから。プレゼン力が高いのは俺の魅力だからね」

 涼さんはいじけて言う。

「その高いスキルを妙なものに注ぎ込まないでくださいよ」

 私と尊さんは二人の会話を聞いてニヤニヤしつつ、エレベーターに向かって歩いていった。
< 611 / 677 >

この作品をシェア

pagetop