部長と私の秘め事

盆休みのお墓参り

 八月四日の月曜日、出社した私はまた笹島さんと秘書業をやっていく。

 恵には昼休みに、涼さんの分もお土産を渡しておいた。

 家族には、旅行の帰り、吉祥寺や亮平の所にも寄ってお土産を渡してきた。

 風磨さんは私たちが旅行に行った土日から一週間、プラス週末まで夏休みだそうだ。

 尊さんはその間出社して、入れ替わりで十二日から翌週末まで夏休みらしい。

 ありがたい事に私や笹島さんの休みもそれに合わせてもらい、お墓参りや恵とちょっと遊ぶ事もできそうで、楽しみにしている。





 八月二週目の一週間、問題なく通常業務を終えたあと、週末からの一般的なお盆休みに入っていく。

 月曜日は山の日で休みなので、大体の人は火曜日から金曜日までに休みをとり、土日を経て十八日の月曜日から復帰する。

 私たちは九日から二泊三日で上村家関係のお墓参りに行き、十二日に篠宮家と速水家のお墓参りに行く事になった。

 それからなんと! 十三日から十七日まで四泊五日でオーストラリアのケアンズに行く事になったのである。

 しかも恵と涼さんも一緒に。

 恵たちのキャンプ旅行はその前に済ますようで、私たちが速水家と温泉に行くのは、翌週にかけてになる。

 随分忙しくてヘロヘロになりそうだけれど、楽しい事が一杯でハイになり、頭がパンクしてしまいそうだ。



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 例年だと、私は亮平の車に乗って実家へ行き、そのまま車二台でお墓に向かう事になっていた。

 尊さんと出会う前は、美奈歩が私と亮平を二人きりにしてなるものかと、同じ車に乗ってくるので、まぁ気まずい空気になったものだ。

 でもそれも去年で終わりと思うと、一気に気持ちが楽になった。

 何せ尊さんのお陰で二人とも和解できたし、今年は彼が一緒に来てくれると思うだけで、むしろワクワクしているほどだ。

「ブンブーン!」

 尊さんの車の助手席に乗った私は、ご機嫌でエアコンを浴び、車内に流れる洋楽を聴いて体を揺らす。

「えらい元気だな」

「尊さんと一緒ならどこまでも!」

「今日は初めての所が多いし、ナビしっかり頼むな」

「アイアイサー!」

 私たちが多忙というのもあり、今日は三箇所のお墓参りをする予定だ。

 最初は継父の上村家のお墓に行くのに、埼玉県吉川(よしかわ)道庭(どうにわ)まで行き、続いて継父の前の奥さんの実家、木崎(きざき)家のお墓参りだ。

 そちらは幸いな事に、道庭からすぐ近くの、千葉県流山(ながれやま)名都借(なづかり)にある。

 最初に千葉県と聞いた時は、アクアラインを使うのかと思っていたけれど、チーバくんの鼻先というか、付け根のほうなので助かった。

 そのあと、甲府にある父方の祖父母のお墓に行って、祖父母に少し挨拶。

 さらに京都まで車をすっ飛ばして、母方の祖父母のお墓参りだ。

 さすがに京都は新幹線でも使わないと日帰りは難しいので、ついでに少し観光する事にして二泊三日の時間を設けた。

「沢山運転させてしまいますけど、すみません」

「いいって事だよ。うちは篠宮家も速水家も、都内の同じ霊園だから、こうやって遠出する事はない。墓参りだっていうのに楽しみって言ったらおかしいが、一大イベントでワクワクしてるよ。……それに、会うべき人に会えるしな」

「……ありがとうございます」

 やっぱり尊さんは、誰よりも〝家族〟を大切にしてくれている。

 私が亮平、美奈歩とギスギスしていた時も、将来生まれてくる子供のためにも、いい関係を作りたいと言ってくれた。

 自分が家族愛に恵まれなかった分、私には安心して帰る場所があるように、と祈ってくれている。

 その優しさに触れるたび、泣きたくなるような気持ちに駆られる。

 毎回「この人のために私は何ができるだろう?」と思うけれど、何度も言われているように、笑顔で過ごし、美味しくご飯を食べる姿を見せるのが一番なんだろう。

「今日は現地集合で、このまま埼玉の墓地に行っていいんだよな?」

「はい。ナビはお任せください」

 そう言った時、私のスマホが鳴った。

 母からだったので、私はすぐ電話に出る。
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