部長と私の秘め事
恵はそろそろお腹いっぱいになってきたのか、話半分に遠くを見ている。
それに気づいたのか、涼さんがフォローを入れた。
「恵ちゃん、お腹いっぱいならデザートいく?」
「……あ、せっかくの最後の晩餐なので、お肉食べます」
「頑張る恵ちゃん格好いい!」
どんどん涼さんは限界オタクみたいになっている。
通常、このお店ではコース料理と言うと料理二品のコースになるらしい。
だから私たちが食べているのは単品メニューになる。
ステーキも色んな種類があり、物凄く分厚いのから、いわゆるTボーンステーキ、それに骨がビヨーンとお皿からはみ出たトマホークステーキ、ローストビーフサラダもあり、恵はそれを食べるみたいだった。
私は散々迷ったけれど、看板メニューらしいトマホークステーキに決めた。
尊さんはじっくり煮込んで柔らかくした、分厚いビーフブリスケットを頼んでいた。
ブリスケットとは部位の名前で、前脚の内側の肩バラ肉らしい。
涼さんはTボーンステーキだ。みんな違ってみんないい。
このレストランはシーフードも絶品だけれど、熟成肉を売りにしていて、自社で抱えている牧場のお肉を使っているそうだ。
「んん~! おいふぃ!」
私は運ばれてきたトマホークステーキの記念撮影をし、いざナイフを入れて一口食べ、歓喜の声を上げる。
正直、「奥さん、そんな事言っても牛肉は日本が一番でしょう?」なんて侮っていた。
けれどオージービーフを侮るなかれ。
ジューシーでお肉の味わいがしっかりあり、焼き加減も抜群で、しつこくないのでスイスイいけてしまう。
お腹いっぱいになってる恵は、引いた目で私を見ていたけれど……。
デザートは恵が「さっぱりした物がいいです」と言ってアイスクリームを頼み、私は大好物のレモンタルトがあったのでそちらにした。
丸いタルト生地の上に絞り出されたレモンクリームが山のように積み重なり、てっぺんにはピンクの綿飴がフワッとかかっている。
その周囲にはラズベリーや紫、黄色のエディブルフラワーがあり、見た目も抜群に可愛い。
料理を食べながらシャンパン、白ワイン、赤ワイン、ついでに美味しそうなカクテルも二杯飲んでしまい、私はご機嫌になってニヤニヤ笑っている。
メンズ二人もアイスクリームで口をサッパリさせ、少し話してから四人でレストランを出た。
「あーあ、お腹いっぱい! ケアンズを食い尽くした感じがする!」
私はプラプラとゆっくり歩き、ポンポンになったお腹をさする。
「満足か?」
「はい、満足です!」
酔っぱらったにやけ顔で答えると、尊さんは頭を撫でてくれた。
いっぽうで恵は無言だ。
彼女はお腹いっぱいになると、何も話さなくなる。
「恵ちゃん、やり残した事はない?」
「……………………っす」
もう限界を通り越して、ランニングあとの野球部みたいになってる。
よく二人でお泊まり女子会をしていた時も、私のメガシリーズの洗礼を受けて無言になり、大丈夫になってから急に電池が入ったように話し始める。
……という事を、まだ涼さんは知らないだろうけど、これから知っていくんだろうなぁ。
と思うと、少しだけ〝私の恵〟が減ってしまう気がするけれど、そんなみみっちい事を言っていたら駄目だ。
だから涼さんが心配そうに恵を見ているのを目にしても、アドバイスしないでおこうと思った。
これから少しずつお互いの事を、実体験を重ねながら知っていくべきで、一から十まで人からトリセツを教えてもらうもんじゃない。
(頑張ってね、涼さん)
私は心の中で彼にエールを送り、胃の中のものを落とすために、トントンとジャンプした。
それを見て尊さんは、「やっぱりフードファイターじゃねぇか」と言っていた。
ホテルに戻ったあと、いつものように片方の部屋で少しお喋りを楽しんだあと、お別れして部屋でまったりモードになる。
「荷物、纏めないと駄目ですね」
「だな。明日になってバタバタしないように」
「尊さん、連れてきてくれてありがとうございました。めっちゃ楽しかったです。ビッグラブ……」
私はそう言って、両手でハートを作る。
それに気づいたのか、涼さんがフォローを入れた。
「恵ちゃん、お腹いっぱいならデザートいく?」
「……あ、せっかくの最後の晩餐なので、お肉食べます」
「頑張る恵ちゃん格好いい!」
どんどん涼さんは限界オタクみたいになっている。
通常、このお店ではコース料理と言うと料理二品のコースになるらしい。
だから私たちが食べているのは単品メニューになる。
ステーキも色んな種類があり、物凄く分厚いのから、いわゆるTボーンステーキ、それに骨がビヨーンとお皿からはみ出たトマホークステーキ、ローストビーフサラダもあり、恵はそれを食べるみたいだった。
私は散々迷ったけれど、看板メニューらしいトマホークステーキに決めた。
尊さんはじっくり煮込んで柔らかくした、分厚いビーフブリスケットを頼んでいた。
ブリスケットとは部位の名前で、前脚の内側の肩バラ肉らしい。
涼さんはTボーンステーキだ。みんな違ってみんないい。
このレストランはシーフードも絶品だけれど、熟成肉を売りにしていて、自社で抱えている牧場のお肉を使っているそうだ。
「んん~! おいふぃ!」
私は運ばれてきたトマホークステーキの記念撮影をし、いざナイフを入れて一口食べ、歓喜の声を上げる。
正直、「奥さん、そんな事言っても牛肉は日本が一番でしょう?」なんて侮っていた。
けれどオージービーフを侮るなかれ。
ジューシーでお肉の味わいがしっかりあり、焼き加減も抜群で、しつこくないのでスイスイいけてしまう。
お腹いっぱいになってる恵は、引いた目で私を見ていたけれど……。
デザートは恵が「さっぱりした物がいいです」と言ってアイスクリームを頼み、私は大好物のレモンタルトがあったのでそちらにした。
丸いタルト生地の上に絞り出されたレモンクリームが山のように積み重なり、てっぺんにはピンクの綿飴がフワッとかかっている。
その周囲にはラズベリーや紫、黄色のエディブルフラワーがあり、見た目も抜群に可愛い。
料理を食べながらシャンパン、白ワイン、赤ワイン、ついでに美味しそうなカクテルも二杯飲んでしまい、私はご機嫌になってニヤニヤ笑っている。
メンズ二人もアイスクリームで口をサッパリさせ、少し話してから四人でレストランを出た。
「あーあ、お腹いっぱい! ケアンズを食い尽くした感じがする!」
私はプラプラとゆっくり歩き、ポンポンになったお腹をさする。
「満足か?」
「はい、満足です!」
酔っぱらったにやけ顔で答えると、尊さんは頭を撫でてくれた。
いっぽうで恵は無言だ。
彼女はお腹いっぱいになると、何も話さなくなる。
「恵ちゃん、やり残した事はない?」
「……………………っす」
もう限界を通り越して、ランニングあとの野球部みたいになってる。
よく二人でお泊まり女子会をしていた時も、私のメガシリーズの洗礼を受けて無言になり、大丈夫になってから急に電池が入ったように話し始める。
……という事を、まだ涼さんは知らないだろうけど、これから知っていくんだろうなぁ。
と思うと、少しだけ〝私の恵〟が減ってしまう気がするけれど、そんなみみっちい事を言っていたら駄目だ。
だから涼さんが心配そうに恵を見ているのを目にしても、アドバイスしないでおこうと思った。
これから少しずつお互いの事を、実体験を重ねながら知っていくべきで、一から十まで人からトリセツを教えてもらうもんじゃない。
(頑張ってね、涼さん)
私は心の中で彼にエールを送り、胃の中のものを落とすために、トントンとジャンプした。
それを見て尊さんは、「やっぱりフードファイターじゃねぇか」と言っていた。
ホテルに戻ったあと、いつものように片方の部屋で少しお喋りを楽しんだあと、お別れして部屋でまったりモードになる。
「荷物、纏めないと駄目ですね」
「だな。明日になってバタバタしないように」
「尊さん、連れてきてくれてありがとうございました。めっちゃ楽しかったです。ビッグラブ……」
私はそう言って、両手でハートを作る。