部長と私の秘め事
「こっちが忌火屋殿。食事をするための火をおこす所だが、コンロとかマッチとか使わず、火鑽具っていう……、無人島で使うようなこう……、ロープを三角に張って、板を上下させる事で先端を回転させて、摩擦で火をおこす奴あるだろ」
そう言って、尊さんは両手を握って上下させる。
「ああー! はいはい! 分かります! 木っ端とかを板の窪みに入れる奴ですね」
「That's right」
へへ……。久し振りにミコ先生のザッツ・ライトをもらった。
「それを毎朝神職の方が、神事として火をおこしているんだ。神道において清浄な火の事を忌火と言う」
「でも、清浄な火なのにどうして〝忌〟なんですか? 穢れてるみたい」
「んー、そもそも火って燃え広がって焼き尽くすもんだろ。だから概念としては穢れになるらしい。伊弉冉尊もカグツチを生んだ時に陰部を火傷しただろ? その辺も絡んでると思う」
「なるほど~! で、神様ってどんなご飯食べてるんですか?」
「食いついたな。せんぐう館に模型があるけど、正方形の入れ物の中に、小さな丸い素焼きの皿が並んで、酒が三つに、米が三つ、魚、鰹節の塊、塩、人参とかの野菜、昆布、みかんとかの果物……が基本みたいだ」
「へぇ~、結構質素ですね」
「まぁ、お供え物だからな。味付けした物より素材の良さを味わってもらいたいんだろう。本当は天照大神は、鮑とか伊勢海老が好物らしいが、特別な時だけだな」
「あっ……、神様であっても世知辛い」
「でも、ご馳走を食べられる時もあるんだ。テレビとかで、白い狩衣を着た神職の方が、大勢ぞろぞろ歩いてるのあるだろ」
「あぁ、はいはい」
「十月十五日に神嘗祭があって、一年に一度、新米とかの穀物を捧げて感謝を述べる祭りなんだ。その時に篠島……名古屋の南にある三河湾で作られた、特別な干鯛とかのご馳走――、由貴大御饌っていう特別メニューを食べられるんだ」
「その模型もありますか?」
「せんぐう館にはなくて、外宮と内宮の間にある神宮徴古館にはあるらしい」
「ほんほん、なるほど」
見てみたい気持ちはあるけれど、時間の都合もあるし、二人だけの旅行じゃないので我慢しておく。
そのあと外宮を出た私たちは、時間を決めて自由行動をとる事にし、外宮参道を散策する事にした。
「……朱里。なんか喰うか?」
「分かってるミコ、しゅきぴ」
小牧さんたちは、それぞれ大人組、子供(?)組に分かれて歩き始め、私たちもスマホのマップアプリ片手に歩き始める。
多分だけど、彼女たちはこうやって自由時間をもうける事で、私たちに気を遣ってくれているんじゃないだろうか、と感じた。
「この辺、何が美味しいでしょうね~。ご飯様は何でも美味しいですが」
「海鮮はもういったし、喰うなら伊勢うどんとかかな?」
「あー! いいですね! ご当地うどん。そうしましょう」
「内宮のおかげ横町でも、色々あるだろうから適度にな」
「任せてください! アカリンストマック、ブラックホール化を進めています」
「洒落になんねぇな」
「女は知らない所で変わっていくんですよ……」
「知らない所すぎるだろうが」
そんな話をしながら、私たちはお店を見つつうどん屋さんを目指す。
こぢんまりとした昔ながらのお店に入り、めかぶや山かけ、月見などは売り切れているようなので、シンプルな〝伊勢うどん〟を食べる事にした。
勿論、私は大盛りだ。
それでも尊さんの頼んだ普通の伊勢うどんは六〇〇円ぐらいで、大盛りでも千円だから、随分安く感じる。
高齢のご夫婦が営んでいるお店で、店内の雰囲気をじっくり見ていると、五分ほどしてうどんが提供された。
「わぁ~! 美味しそう!」
私は写真を撮ってからいざ、実食し始める。
「んン!」
太めの伊勢うどんはとても柔らかくて、フカフカと言っていい。
なのにちゃんと芯が残っているので、完全に柔らかうどんとも言えず、絶妙なゆで加減だ。
普通の薄味のおつゆのうどんというより、ぶっかけうどんとか、油そば的な感じと言ったら伝わりやすいんだろうか。
底のほうにやや濃い目のおつゆがあり、よく混ぜて食べる。
美味しくてペロッといけるので、大盛りでも足りないぐらいだ。
でも次なる食べ物様スタンプラリーが待っているので、余白を空けておかなければ。
そう言って、尊さんは両手を握って上下させる。
「ああー! はいはい! 分かります! 木っ端とかを板の窪みに入れる奴ですね」
「That's right」
へへ……。久し振りにミコ先生のザッツ・ライトをもらった。
「それを毎朝神職の方が、神事として火をおこしているんだ。神道において清浄な火の事を忌火と言う」
「でも、清浄な火なのにどうして〝忌〟なんですか? 穢れてるみたい」
「んー、そもそも火って燃え広がって焼き尽くすもんだろ。だから概念としては穢れになるらしい。伊弉冉尊もカグツチを生んだ時に陰部を火傷しただろ? その辺も絡んでると思う」
「なるほど~! で、神様ってどんなご飯食べてるんですか?」
「食いついたな。せんぐう館に模型があるけど、正方形の入れ物の中に、小さな丸い素焼きの皿が並んで、酒が三つに、米が三つ、魚、鰹節の塊、塩、人参とかの野菜、昆布、みかんとかの果物……が基本みたいだ」
「へぇ~、結構質素ですね」
「まぁ、お供え物だからな。味付けした物より素材の良さを味わってもらいたいんだろう。本当は天照大神は、鮑とか伊勢海老が好物らしいが、特別な時だけだな」
「あっ……、神様であっても世知辛い」
「でも、ご馳走を食べられる時もあるんだ。テレビとかで、白い狩衣を着た神職の方が、大勢ぞろぞろ歩いてるのあるだろ」
「あぁ、はいはい」
「十月十五日に神嘗祭があって、一年に一度、新米とかの穀物を捧げて感謝を述べる祭りなんだ。その時に篠島……名古屋の南にある三河湾で作られた、特別な干鯛とかのご馳走――、由貴大御饌っていう特別メニューを食べられるんだ」
「その模型もありますか?」
「せんぐう館にはなくて、外宮と内宮の間にある神宮徴古館にはあるらしい」
「ほんほん、なるほど」
見てみたい気持ちはあるけれど、時間の都合もあるし、二人だけの旅行じゃないので我慢しておく。
そのあと外宮を出た私たちは、時間を決めて自由行動をとる事にし、外宮参道を散策する事にした。
「……朱里。なんか喰うか?」
「分かってるミコ、しゅきぴ」
小牧さんたちは、それぞれ大人組、子供(?)組に分かれて歩き始め、私たちもスマホのマップアプリ片手に歩き始める。
多分だけど、彼女たちはこうやって自由時間をもうける事で、私たちに気を遣ってくれているんじゃないだろうか、と感じた。
「この辺、何が美味しいでしょうね~。ご飯様は何でも美味しいですが」
「海鮮はもういったし、喰うなら伊勢うどんとかかな?」
「あー! いいですね! ご当地うどん。そうしましょう」
「内宮のおかげ横町でも、色々あるだろうから適度にな」
「任せてください! アカリンストマック、ブラックホール化を進めています」
「洒落になんねぇな」
「女は知らない所で変わっていくんですよ……」
「知らない所すぎるだろうが」
そんな話をしながら、私たちはお店を見つつうどん屋さんを目指す。
こぢんまりとした昔ながらのお店に入り、めかぶや山かけ、月見などは売り切れているようなので、シンプルな〝伊勢うどん〟を食べる事にした。
勿論、私は大盛りだ。
それでも尊さんの頼んだ普通の伊勢うどんは六〇〇円ぐらいで、大盛りでも千円だから、随分安く感じる。
高齢のご夫婦が営んでいるお店で、店内の雰囲気をじっくり見ていると、五分ほどしてうどんが提供された。
「わぁ~! 美味しそう!」
私は写真を撮ってからいざ、実食し始める。
「んン!」
太めの伊勢うどんはとても柔らかくて、フカフカと言っていい。
なのにちゃんと芯が残っているので、完全に柔らかうどんとも言えず、絶妙なゆで加減だ。
普通の薄味のおつゆのうどんというより、ぶっかけうどんとか、油そば的な感じと言ったら伝わりやすいんだろうか。
底のほうにやや濃い目のおつゆがあり、よく混ぜて食べる。
美味しくてペロッといけるので、大盛りでも足りないぐらいだ。
でも次なる食べ物様スタンプラリーが待っているので、余白を空けておかなければ。