部長と私の秘め事
「ごちそうさまでしたー!」

 お礼を言ってお店を出たあと、私たちは付近のお店を回り、おやつのぱんじゅうを買い、中にあんこが入った平たい焼き餅、へんば餅と伊勢茶でティータイムにし、おにぎりみたいな三角形の、……今川焼きとか大判焼きとか言われる、ベイクドモチョチョな三方焼きも買った。

 餡子、カスタード、チョコレートがあるなら三つともいくのが礼儀なので、ペロッと食べておく。

 そして『山村みるくがっこう』で、長方形のプリンが串に刺さった山村ぷりんばーを食べ、瓶プリン、ソフトクリーム、店頭で瓶牛乳も飲ませてもらった。

「よう食ったな」

「……さすがに食べ過ぎですかね?」

 心配になって尋ねると、尊さんはポケットからスッと胃腸薬を出す。

「いや、どんだけ食ってもいいんだけど、体は大丈夫か?」

「あっ、いえ、胃は丈夫なので全然いけます」

「まったく頼もしいよ、お前は」

 食べたあとにトントンとジャンプすると、そのたびに尊さんは横を向いて笑っていた。

「恵がいたら、ドン引きした目で見ていたでしょうねぇ……」

「中村さんって結構、感情的な忖度をしないよな」

 そう言われ、私は「あー……」と納得して頷く。

「もともと恵は〝女子仕草〟が得意じゃないんです。本心じゃないのに『そんな事ないよ~』って褒め合ったりとか。私もそういうのあまり得意じゃないので、馬が合ったんだと思います。……お互い本音で言っているからこそ、傷つける言葉は言わないし、第三者から見れば『えっ? 傷付かない?』っていう言葉でも、私たち二人の間では〝当たり前〟なんです。……そういう空気感になれるまで、やっぱりちょっと掛かりましたけどね。お互い常識人ではあるつもりなので、初手から知らない人にそっけない言葉をぶつけたら、諍いの元になるのは分かっているので」

「あー、なるほどな」

「尊さんはバランス取れてますよね」

「うーん……。一番安らげる場所である家が、針の筵だったから、どこへ行っても傷付かないように、当たり障りのない態度をとる癖がついているんだと思う。学生時代までは孤高ぶっていられたけど、社会人になったら篠宮に飼い殺しだからな。……ま、今は違うけど。それでも取引先相手がいたり、顧客がいる以上角の立つ態度はとれねぇよ」

「ですねー。……涼さんは凄い器用そう」

「奴はもともと姉妹に挟まれて、立ち回りが上手かったからな。空気を読むのも抜群に上手いし、学校でも誰かが居心地悪い思いをする話題だったら、パッと空気を変えてた。恩を着せたいんじゃなくて、無意識に〝みんな平和に〟って思ってるんだろう。良くも悪くも、『波風立たないのが一番いい』と思ってるし、あいつ自身争い事を好まないというか、面倒臭がるタイプだから、和ませ役が板に付いたんだろうな」

「なるほどー。なんか分かります」

 私たちはそんな会話をしながら、ゆっくりと駐車場に向かう。





 運転手さんが冷房をつけてくれていたので、私たちは車の中で涼みながらみんなを待った。

 やがて全員集合したあと、車で十五分ほど離れた内宮へ向かった。





「わー! ここ、テレビで見た事ある!」

 駐車場から歩いてすぐ、鳥居の向こうに宇治橋(うじばし)がある。

 橋が架かっているのは五十鈴川(いすずがわ)だ。

 橋を見ていると、皆さん今度は右側通行をしている。

「ここ、冬至になったら宇治橋の真正面に太陽が上がってくるんだよ。日光東照宮も、江戸の真北にあって、その上に北極星があるだろ」

「はい」

 テレビでも見たけれど、日光東照宮を参拝する事は、宇宙の最高神を参拝するとされているらしい。

 北の空の星については、北極星を中心に周りの星が回っている事で知られているし、日光東照宮や外山、瀧尾神社、釈迦堂など、近隣にある建物をなどを結ぶと、オリオン座の形になる事でも有名だ。

「ああいう感じで、独自のやり方で正確な方角を見つけて、そっちに向かって建物を建てていたんだと思うよ。すげぇよな」

「ふんふん」

 私は鼻息荒く頷き、ミコペディアに傾聴する。

「で、この宇治橋も二十年に一度架け替えられるし、この鳥居も、元は外宮にあったんだよ」

「なんと!」
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