部長と私の秘め事

旅行最終日

「明日、土産買いまくるんだろ。早めに寝るぞ」

「……はい」

 尊さんが一旦距離をとってくれた事で、ドキドキが落ち着いていく。

(鎮まれ~……)

 私はゆっくり呼吸を繰り返す。

「帰って疲れが取れた頃な」

 ボソッと尊さんに言われ、私は真っ赤になって「……はい」と返事をしたのだった。



**



 翌日、朝食会場はロビーの奥にある青コーナー、バーの所になっていた。

 エレベーターを降りた向かいには、ウェイクアップドリンクという物が用意されてあり、横長のテーブルの上にコーヒーサーバー、アイスペールの中に冷やされたオレンジジュースとペパーミントティーの蓋つきデキャンタがあった。

 ありがたくオレンジジュースを飲んだあと、白を基調としたロビーに行き、入り口近くの白い壁には、額縁の中に大きな鏡があったので、ちょいちょいと前髪を直す。

 その手前には半円形の花台があり、白い胡蝶蘭が置かれてあった。

 ……のを見て、何となく涼さんの家の洗面所を思い出してしまった。

 木製のスタンド式の看板には朝食会場ですよという事や、時間が書かれてあり、入り口を挟んで向かいにはホテル名が書かれたスタンドがある。

 朝食会場はやっぱり高級ホテルなだけあり、落ち着いていて静かだ。

 会場は右手にビュッフェコーナーが壁沿いにあり、四人掛けの白いテーブル、黒いテーブルが交互に配され、奥へと続いている。

 左手の壁際には縦長の木製装飾パネルが等間隔に並んでいて、中央にはホテルの『セント』を表すのか十字架に似た模様があり、周囲を金色のフレームが覆っている。

 天井からは白とシルバーを基調としたシャンデリアが下がり、大人の雰囲気だ。

「わぁ……、ワクワクする」

 ビュッフェには色んな食べ物が並んでいて、その奥ではシェフたちが忙しく働いているのが見える。

 席に案内されると、どうやらメインの料理を和食か洋食かで決めるんだそうだ。

 メニューを見ると和食は基本的な焼き魚、出汁巻き卵、豆腐、お刺身、味噌汁、ご飯、お漬物……とオーソドックスな感じ。

 洋食は玉子料理を一つ選ぶ感じで、三種類あるエッグベネディクト、三種類あるオムレツ、卵を二つ使ったその他玉子料理――スクランブルエッグ、ゆで卵、ポーチドエッグ、目玉焼きだ。

 下に書いてあるけれど、卵は京都宇治市にあるブランド養鶏卵を使っているそうだ。

 他にもビュッフェコーナーにも飲み物があるけれど、別途メニューから注文する物や、うどん、お粥、オートミール、ワッフル、リコッタパンケーキ、フレンチトーストなどがある。

 あとはお茶漬け、サプリメント枠(?)でスープ、チキンソーセージ、グルテンフリーシリアル、フルーツヨーグルトボウルなどもある。

 他にもキッズメニュー、ヴィーガンメニューなども充実していた。

「どうしようかな……」

 選ばなければならないと言われると、真剣な顔になってしまう。

「金さえ払えば食べさせてくれるなら、食いたいもん食えよ。『食べておきたかった』ってなるの、一番嫌だろ?」

「うう……っ、尊さんが神しゅぎる……!」

 私はなむなむと彼を拝み、尊さんはスタッフさんを呼んで事情を話して快諾してもらった。

 私は主に洋食のほうでハムとオランデーズソースのエッグベネディクト。マッシュルームとベーコン、トリュフペーストのオムレツ、うどん、お粥、ワッフル、パンケーキ、フレンチトーストを食べさせてもらう事にした。

 きっとスタッフさん「化け物……」と思っているだろうけど、ニコニコ笑顔なので頭が上がらない。

 尊さんは「おっさんだから、旅行のトータルも考えてカロリー控えめの和食にする」と言ってて、おっさんというより意識高い系の女子だ。

「それじゃあ、お先に行ってきます!」

 ワクワクして立ちあがると、尊さんは「おう」と手をヒラヒラ振ってくれた。

 列に並んでトレーにお皿を載せ、順番に回っていくと、サラダコーナーにはレタスは勿論、胡瓜、カラフルなミニトマト、赤黄パプリカ、ヤングコーンなど、サラダの具材がそれぞれボウルに入っている。

 隣にはドレッシングコーナーがあり、ジャムみたいな瓶に三種類用意されてあった。

 トッピングとして蓋つきのガラス瓶や木製の器に、ナッツや胡麻、色んな物が用意されてあって、サラダをカスタムするだけでも楽しそうだ。

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