部長と私の秘め事
「いやー! 買ったわねぇ! 私もー!」

 タクシー乗り場の近くでは、すでに百合さん、将馬さん、ちえりさんがいて、沢山の荷物がある。

 皆さんも尊さんと同じ事を考えたのか、スーツケースは持っていない。

「宅配便にしても大丈夫な物は送ったけど、手荷物がこんなにできちゃったわぁ」

 彼女は満足そうに笑う。

「私も尊さんに、美味しい物を沢山買ってもらいました!」

「あらー、良かったわねぇ。旅行している最中も楽しいけれど、帰ったあとにお土産を堪能するのも乙な物よね」

 そうこうしているうちに大地さん、小牧さん、弥生さんも集まり、数台のタクシーに分乗して伊丹空港へ向かった。





 空港へは二十分ちょいで、タクシー代が四千円を超えてしまったけれど、やはり尊さんは動じずにサラリと払ってくれた。

 ……すみません……。

 チェックインしたあとは、また買い物をし、お目当ての豚まんとチーズケーキもGETした。

 勿論、これも恵に食べさせないと!

「朱里と違ってこっちは〝実〟になるんだから……」と言われそうだけれど、食べられる時に食べておかないと。

 恵は毎朝走ってるし、きっと大丈夫!

 勿論、家族や春日さん、エミリさん達へのお土産も忘れていない。

 私に友達が大勢いたら、もっとお土産を買っていたかもしれないけれど、ほとんど独り占め状態だ。

 お土産を渡す人にも「あれもこれも……」と渡したいけれど、家族はともかく春日さんやエミリさんには、あげすぎたら負担に思われるかもしれない。

 あと、恵づたいに商品開発部の人たちにも、ばらまきお菓子を持って行ってもらう事にした。

 もう所属していない部署ではあるけれど、尊さんともども沢山お世話になったし、大切な恵がいる部署だから、皆さんにも一応……。

 保安を通ったあとも魅力的なお土産屋さんは沢山あり、それらをブラブラ見て時間を潰し、あとは飲み物や軽食をつまみつつ時間を待ち、またクラスJのシートで帰路に着く事となった。



**



「はぁ……」

 飛行機のシートに座った私は、とても長く感じた旅行を振り返り、やっと帰れると思って人心地つく。

「帰ったら速攻シャワーですね」

「だな。お盆休みとはいえ、八月はきつい」

 旅行中、日傘やハンディファン、冷感汗拭きシート、スプレーなど、ありとあらゆるグッズを駆使したけれど、滝のように流れる汗を止める事はできなかった。

 高級ホテルで過ごす時は天国だったけれど、うだる暑さの中、沢山移動して観光するのはなかなかだ。

「きっと百合さんたちも負担だったろうし、今度は涼しい季節がいいですね」

「だな」

 やがてポーンとサイン音が鳴り、ベルト着用のランプが点灯して飛行機が動いていく。

 滑走路に向かってゆっくりと移動していく感覚は、毎回ドキドキする。

 一時間半のフライトだけれど、疲れたから寝てしまうかもしれない。

 そのうち飛行機は滑走路に着き、エンジン音がしてグンッと後ろ向きにGがかかる。

 少し緊張して窓の外を見ていると、物凄いスピードで滑走した飛行機は離陸し、グングン空に昇っていく。

(グッバイ大阪。また食べに来るぜ)

 私は心の中で呟き、「はぁー……」と溜め息をついたあと、景色が見えなくなって上空に着くまで窓の外を見ていた。



**



 羽田空港に着いたのは十七時で、私たちは荷物を手に、副社長づきの運転手、鉢村さんの車を待った。

 皆さんとは空港で解散し、それぞれの車で帰る事になっている。

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