部長と私の秘め事
「チャームについては篠宮さんから聞いたかも分からないけど、私、彼女や鏑木さんとトイレで鉢合わせして、色々言っちゃったの。……それが、結果的に彼女たちの恨みを増幅させたように思えて、…………カッとなった事を後悔してる」
「うん。分かった。いいんじゃない?」
私はサラッと言って、枝豆をプチプチ食べ続ける。
「……『いいんじゃない?』って……」
恵は不安そうな顔で私を見つめる。
「恵が私を思って言ってくれたなら、私はそれを否定しない。私の身に起こった事を、我が事のように怒ってくれる親友って、滅多にいないから。ありがとうね」
「……うん」
頷いた恵の髪が、サラリと揺れる。
けれど彼女は視線を上げずに沈黙し、私は彼女の長い睫毛がときおり瞬きと共に動くのをジッと見つめた。
私は恵を否定しないし、お礼を言ったのに、余計落ち込んでしまったようだった。
「……恵?」
優しく彼女の名前を呼ぶと、恵はポロッと涙を零す。
「……余計な事をしてごめん。『朱里のため』と思って喧嘩したけど、……結局あれは、ムカついた自分をスッキリさせるための行動だった」
「いいんだよ。誰だってそういう時がある。私だって恵に何かあったら、我を失うと思う」
「……私、いつも一歩引いたところからクールぶって物事を見ていたつもりなのに、……駄目だった」
「もういいの。彼女たちの処分は会社に任せるし、私は直接彼女たちが何をしたのか、どんな汚い言葉を口にしたのか知らない。私は恵が思ってるほど傷付いてないの。……私の代わりに恵が傷付いちゃったよね。ごめんね」
「……っ、違う! 朱里に謝らせたいんじゃなくて……」
「けーい」
私は立ちあがり、彼女の隣に座ってギュッと抱き締める。
「ありがとう。大好きだよ。……大好きだからこそ、恵に反省してほしくない。恵は私のためと思って、正しい事だと思ったから立ち向かってくれたんでしょ? 私はその気持ちに感謝してるし、結果的に上の人たちが動いてちゃんとした調査になって、処分がくだる。恵は秘書課のみんなのためになる事をしたんだよ」
「うん……」
「こうやって弱い面を見せてくれるの、凄く貴重だし嬉しいよ。甘えてくれてるなって思える。でも私はいつもの恵らしく、スパッと一刀両断、岩塩を擦り込むような性格も大好きだよ」
「ぶふ……っ、それ、褒めてんの?」
「褒めてるよ~。誰にも媚びないところ、恵の美点だもん」
「……私、この性格で『クール』とか『冷たい』とか『男みたい』って言われてるけど、こうやって朱里や涼さんとかに『そのままでいい』って言ってもらえるの、凄く嬉しい。いつも周りの顔色を窺って生きていかなくていいんだ、って思える。……いや、仕事では最低限ちゃんと〝社会人〟やるけど」
「うんうん。私もかつては『クール』って言われてたけど、結局は人付き合いがよく分からないだけだったし。結局人って、本当に気の合う人と合うまで、自分の性格がどうなのか分からないかもしれないね。今の私って昔のスンッ……とした状態と、めっちゃ差があるじゃない。私、今の自分が凄く好きなんだよね。自然体でいられてとても楽。そうある事を許してくれた、尊さんや恵にとても感謝してる」
「私も、この可愛くない性格を好きって言ってくれる朱里が大好き」
恵の言葉を聞き、私は少し体を離すと、スベスベした彼女の頬を両手で包み、ムニュムニュと揉む。
「恵は可愛いよ! 世界一可愛い! 私は〝恵可愛い会〟の名誉会長だもんね!」
「ふっ、……ふふ、なんだそりゃ」
彼女は柔らかく笑ったあと、私を見つめて言った。
「……あ、甘えていい?」
「うん、どうぞ」
「もう一回、『大好き』って言ってほしい」
いつにない恵のデレを見て嬉しくなった私は、ギューッと彼女を抱き締めて囁いた。
「世界一大好きだよ、恵。私の可愛い親友」
「……朱里……」
恵も私の背中に手を回してお互いの気持ちを確かめ合っていた時――。
「失礼いたしまーす」
個室のドアがガラッと開き、抱き合っていた私たちを見た大学生ぐらいの男の子が、顔を真っ赤にして目を見開いた。
「あっ、ごめんなさい。料理置いてくださいね~」
運ばれてきた料理にホクホクした私が席に戻ると、彼は「……っす」と返事をし、ぎこちない動作で料理をテーブルに置いていく。
「うん。分かった。いいんじゃない?」
私はサラッと言って、枝豆をプチプチ食べ続ける。
「……『いいんじゃない?』って……」
恵は不安そうな顔で私を見つめる。
「恵が私を思って言ってくれたなら、私はそれを否定しない。私の身に起こった事を、我が事のように怒ってくれる親友って、滅多にいないから。ありがとうね」
「……うん」
頷いた恵の髪が、サラリと揺れる。
けれど彼女は視線を上げずに沈黙し、私は彼女の長い睫毛がときおり瞬きと共に動くのをジッと見つめた。
私は恵を否定しないし、お礼を言ったのに、余計落ち込んでしまったようだった。
「……恵?」
優しく彼女の名前を呼ぶと、恵はポロッと涙を零す。
「……余計な事をしてごめん。『朱里のため』と思って喧嘩したけど、……結局あれは、ムカついた自分をスッキリさせるための行動だった」
「いいんだよ。誰だってそういう時がある。私だって恵に何かあったら、我を失うと思う」
「……私、いつも一歩引いたところからクールぶって物事を見ていたつもりなのに、……駄目だった」
「もういいの。彼女たちの処分は会社に任せるし、私は直接彼女たちが何をしたのか、どんな汚い言葉を口にしたのか知らない。私は恵が思ってるほど傷付いてないの。……私の代わりに恵が傷付いちゃったよね。ごめんね」
「……っ、違う! 朱里に謝らせたいんじゃなくて……」
「けーい」
私は立ちあがり、彼女の隣に座ってギュッと抱き締める。
「ありがとう。大好きだよ。……大好きだからこそ、恵に反省してほしくない。恵は私のためと思って、正しい事だと思ったから立ち向かってくれたんでしょ? 私はその気持ちに感謝してるし、結果的に上の人たちが動いてちゃんとした調査になって、処分がくだる。恵は秘書課のみんなのためになる事をしたんだよ」
「うん……」
「こうやって弱い面を見せてくれるの、凄く貴重だし嬉しいよ。甘えてくれてるなって思える。でも私はいつもの恵らしく、スパッと一刀両断、岩塩を擦り込むような性格も大好きだよ」
「ぶふ……っ、それ、褒めてんの?」
「褒めてるよ~。誰にも媚びないところ、恵の美点だもん」
「……私、この性格で『クール』とか『冷たい』とか『男みたい』って言われてるけど、こうやって朱里や涼さんとかに『そのままでいい』って言ってもらえるの、凄く嬉しい。いつも周りの顔色を窺って生きていかなくていいんだ、って思える。……いや、仕事では最低限ちゃんと〝社会人〟やるけど」
「うんうん。私もかつては『クール』って言われてたけど、結局は人付き合いがよく分からないだけだったし。結局人って、本当に気の合う人と合うまで、自分の性格がどうなのか分からないかもしれないね。今の私って昔のスンッ……とした状態と、めっちゃ差があるじゃない。私、今の自分が凄く好きなんだよね。自然体でいられてとても楽。そうある事を許してくれた、尊さんや恵にとても感謝してる」
「私も、この可愛くない性格を好きって言ってくれる朱里が大好き」
恵の言葉を聞き、私は少し体を離すと、スベスベした彼女の頬を両手で包み、ムニュムニュと揉む。
「恵は可愛いよ! 世界一可愛い! 私は〝恵可愛い会〟の名誉会長だもんね!」
「ふっ、……ふふ、なんだそりゃ」
彼女は柔らかく笑ったあと、私を見つめて言った。
「……あ、甘えていい?」
「うん、どうぞ」
「もう一回、『大好き』って言ってほしい」
いつにない恵のデレを見て嬉しくなった私は、ギューッと彼女を抱き締めて囁いた。
「世界一大好きだよ、恵。私の可愛い親友」
「……朱里……」
恵も私の背中に手を回してお互いの気持ちを確かめ合っていた時――。
「失礼いたしまーす」
個室のドアがガラッと開き、抱き合っていた私たちを見た大学生ぐらいの男の子が、顔を真っ赤にして目を見開いた。
「あっ、ごめんなさい。料理置いてくださいね~」
運ばれてきた料理にホクホクした私が席に戻ると、彼は「……っす」と返事をし、ぎこちない動作で料理をテーブルに置いていく。


