それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう
 貧乏に嫌気が差した母は、他に男をつくって出ていった。
 カリーナは貧乏だったせいで近所の子どもたちに馬鹿にされたのに、ミレッラは友だちと楽しそうに遊んでいた。
 人のものを横取りした地位で幸せそうに笑っているミレッラを見た時、激しい怒りで頭がどうにかなりそうだった。
 それなのに、揶揄ってきた奴らに仕返しとして髪を切ったら、ミレッラがしゃしゃり出てきて説教を垂れ込んできたのだ。
 ――いったい何様だ。
 本当ならミレッラよりカリーナの方がお金持ちで、誰からも好かれて、友だちもたくさんいて、優しい家族に囲まれているはずだった。
 本当ならミレッラではなく、カリーナが『伯爵令嬢』として一目置かれ、夜会で素敵な出会いをし、幸せな結婚をするはずだった。

「ああああもうっ! 最悪! 最悪! 思い出しちゃったじゃない!」

 窓ガラスがパリンッと割れる音がする。

「カリーナ様」

 その時、横からすっと伸びてきた手がカリーナの手を真綿で包み込むように握った。
 従僕が勝手に触らないでと反射的に払い除けようとしたけれど、その前に手を握った男の正体に気付き、すんでのところで止まる。
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