幼馴染の影と三年目の誤解 ――その笑顔は、私に向かない
第44章 『監視カメラの真実——祐真の影』
翌朝――。
隼人は早めに出勤し、
そのままマンション管理室へ向かった。
担当の管理員は、
隼人の深刻な表情を見て
すぐに事情を察してくれた。
「奥様を守るための確認、とのことでしたね?」
「はい。
ありがとうございます」
隼人の声は低く、
怒りを押し殺したような静けさがあった。
管理員は
モニターの録画一覧を開いて言う。
「では……
昨夜の映像、この時間帯で合っていますか?」
画面には
“ファミレスへ向かう前後”の
時間帯が映し出される。
隼人は頷いた。
「お願いします」
映像が再生される。
暗いエントランスに、
雨の雫が反射する。
そこへ、
傘を差した由奈が入ってくる。
――その10秒後。
祐真が、
由奈を追うように
エントランスへ入ってきた。
管理員が少し驚いた声を漏らす。
「……この方、奥様を追ってますね」
隼人の拳が静かに握られる。
(やっぱり……
つけていたんだ)
由奈が振り返らない。
祐真は距離を詰め、
由奈を見失わないように
必死についていく。
これは“偶然”ではない。
隼人の目が
鋭く光る。
由奈が乗ったエレベーター。
閉まる直前、
祐真が手を伸ばし――
無理やり乗り込んでいた。
管理員が息を飲む。
「これは……危険行為ですよ」
(……お前……
由奈を怖がらせていたのか)
由奈は隅に立ち、
祐真はじっと近づいて立つ。
隼人の手が震える。
(許さない。
絶対に)
次のカメラは
非常階段前。
管理員が早送りする。
映像の中で、
ファミレス帰りの由奈が
ひとりでふらふら歩いている。
泣いたあとのように
足元が危うい。
(……由奈……)
隼人の胸が痛んだ。
そして――
祐真が、壁の影から現れた。
由奈を見る目は、
心配ではなく“執着”。
隼人は画面に近づく。
(この目……
優しさなんて欠片もない)
祐真は由奈に近づき、
肩に手を伸ばそうとする。
しかし――
由奈ははっきり拒絶して
身を引いた。
(由奈……
あの時も……俺を裏切ってなんかいない)
祐真は苛立ち、
手を引っ込める。
そして――
スマホを構えた。
管理員が驚いて言った。
「……これ、奥様を……
勝手に撮影してますね」
祐真のスマホが光る。
由奈が泣き崩れる瞬間を
シャッター音が切り取る。
――これが、噂になった“抱き寄せ写真”の元だ。
その瞬間、
隼人の拳が机を叩いた。
ドンッ。
管理員が驚いて振り返る。
「す、すみません!」
隼人は深呼吸して頭を下げた。
だがその瞳は、
殺意にも似た怒りで満ちていた。
(祐真……
お前だけは……絶対に許さない)
管理員がモニターを切り替える。
そこには――
ファミレスから出てくる祐真と由奈。
由奈は怯えて後ずさり、
祐真は腕を掴んで引き寄せようとする。
由奈が必死に振り払うと、
祐真は苛立って手を振り上げ――
そこへ、隼人が飛び込む。
隼人が祐真の腕を掴み、
由奈を自分の背に庇う瞬間。
(俺は……
間に合っていたんだ)
祐真が何か怒鳴っているが
音声はない。
しかし
由奈が怯えて泣き崩れ、
隼人が彼女を抱き締めた瞬間――
映像にはっきり残っている。
管理員が呟いた。
「これは……
奥様を守っている姿ですね」
隼人は小さく息を吐いた。
「……ありがとうございます」
この映像があれば、
祐真が仕掛けた“嘘”は
完全に崩せる。
麗華の写真も、
祐真の写真も――
すべて“虚構”だと証明できる。
管理員は言う。
「コピーをUSBに保存してお渡しします」
隼人は深々と頭を下げた。
「……お願いします。
妻を守るためです」
USBを受け取った瞬間、
隼人の心は迷いなく固まった。
由奈を泣かせた全てを、終わらせる。
マンションから出ると、
朝の光が隼人の横顔を照らした。
風が冷たい。
しかし隼人の胸の中には
燃えるような熱があった。
(麗華。
祐真。
二人とも――“終わり”だ)
隼人は静かに呟く。
「由奈……
もう二度と……
誰にも傷つけさせない」
反撃の証拠はそろった。
あとは――
決着をつけるだけ。
隼人は早めに出勤し、
そのままマンション管理室へ向かった。
担当の管理員は、
隼人の深刻な表情を見て
すぐに事情を察してくれた。
「奥様を守るための確認、とのことでしたね?」
「はい。
ありがとうございます」
隼人の声は低く、
怒りを押し殺したような静けさがあった。
管理員は
モニターの録画一覧を開いて言う。
「では……
昨夜の映像、この時間帯で合っていますか?」
画面には
“ファミレスへ向かう前後”の
時間帯が映し出される。
隼人は頷いた。
「お願いします」
映像が再生される。
暗いエントランスに、
雨の雫が反射する。
そこへ、
傘を差した由奈が入ってくる。
――その10秒後。
祐真が、
由奈を追うように
エントランスへ入ってきた。
管理員が少し驚いた声を漏らす。
「……この方、奥様を追ってますね」
隼人の拳が静かに握られる。
(やっぱり……
つけていたんだ)
由奈が振り返らない。
祐真は距離を詰め、
由奈を見失わないように
必死についていく。
これは“偶然”ではない。
隼人の目が
鋭く光る。
由奈が乗ったエレベーター。
閉まる直前、
祐真が手を伸ばし――
無理やり乗り込んでいた。
管理員が息を飲む。
「これは……危険行為ですよ」
(……お前……
由奈を怖がらせていたのか)
由奈は隅に立ち、
祐真はじっと近づいて立つ。
隼人の手が震える。
(許さない。
絶対に)
次のカメラは
非常階段前。
管理員が早送りする。
映像の中で、
ファミレス帰りの由奈が
ひとりでふらふら歩いている。
泣いたあとのように
足元が危うい。
(……由奈……)
隼人の胸が痛んだ。
そして――
祐真が、壁の影から現れた。
由奈を見る目は、
心配ではなく“執着”。
隼人は画面に近づく。
(この目……
優しさなんて欠片もない)
祐真は由奈に近づき、
肩に手を伸ばそうとする。
しかし――
由奈ははっきり拒絶して
身を引いた。
(由奈……
あの時も……俺を裏切ってなんかいない)
祐真は苛立ち、
手を引っ込める。
そして――
スマホを構えた。
管理員が驚いて言った。
「……これ、奥様を……
勝手に撮影してますね」
祐真のスマホが光る。
由奈が泣き崩れる瞬間を
シャッター音が切り取る。
――これが、噂になった“抱き寄せ写真”の元だ。
その瞬間、
隼人の拳が机を叩いた。
ドンッ。
管理員が驚いて振り返る。
「す、すみません!」
隼人は深呼吸して頭を下げた。
だがその瞳は、
殺意にも似た怒りで満ちていた。
(祐真……
お前だけは……絶対に許さない)
管理員がモニターを切り替える。
そこには――
ファミレスから出てくる祐真と由奈。
由奈は怯えて後ずさり、
祐真は腕を掴んで引き寄せようとする。
由奈が必死に振り払うと、
祐真は苛立って手を振り上げ――
そこへ、隼人が飛び込む。
隼人が祐真の腕を掴み、
由奈を自分の背に庇う瞬間。
(俺は……
間に合っていたんだ)
祐真が何か怒鳴っているが
音声はない。
しかし
由奈が怯えて泣き崩れ、
隼人が彼女を抱き締めた瞬間――
映像にはっきり残っている。
管理員が呟いた。
「これは……
奥様を守っている姿ですね」
隼人は小さく息を吐いた。
「……ありがとうございます」
この映像があれば、
祐真が仕掛けた“嘘”は
完全に崩せる。
麗華の写真も、
祐真の写真も――
すべて“虚構”だと証明できる。
管理員は言う。
「コピーをUSBに保存してお渡しします」
隼人は深々と頭を下げた。
「……お願いします。
妻を守るためです」
USBを受け取った瞬間、
隼人の心は迷いなく固まった。
由奈を泣かせた全てを、終わらせる。
マンションから出ると、
朝の光が隼人の横顔を照らした。
風が冷たい。
しかし隼人の胸の中には
燃えるような熱があった。
(麗華。
祐真。
二人とも――“終わり”だ)
隼人は静かに呟く。
「由奈……
もう二度と……
誰にも傷つけさせない」
反撃の証拠はそろった。
あとは――
決着をつけるだけ。