天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】
そう思うと、気分が沈む。
だって私は、彼を愛しているから。彼から向けられる感情がまやかしだとしたら、どうたらいいの?
消えてしまいたい気分になる。
それにしたって、彼に許嫁がいるなんて知らなかった。いや、本当かどうか、まだわからない。
でもあの女性の涙は、声は、確かに宗司さんへの愛を、恋を訴えていた。
同じだから、わかるのだ。私も宗司さんに恋をしているから。
だとすれば――と、略奪愛だと糾弾してくる声が鼓膜に蘇り、耳を塞ぎたくなる。
塞いだところで、なのだけれど。
もうすぐ駅に着く。私はどんな顔をして彼に会えばいいの?
ふらふらと改札を出る。腕を掴まれ、振り向いた。
「宗司さん」
私を見つめる彼の整いすぎていると言っていい端整なかんばせには、どんな感情も浮かんではいなかった。ありとあらゆる感情がスコンと抜けた、そんな顔。
私は、どんな顔をしているのだろう?
歪に笑っているのかもしれない。あるいは、泣きそうになっているのかも。