ハル
月明かりがなければ一寸先だって見えていなかっただろう。
靴で窓ガラスの破片を踏みつけてパリパリと音が鳴る。
その音に身をすくめて息を殺した。
近くに人の気配はなく、愛の泣き声も聞こえてこなくなっている。
なにかにおびき出されてここまで来てしまったような感覚に囚われて、足がすくんだ。
「大丈夫か?」
諒が振り向いて声をかけてくれなければ前に進むこともできなかっただろう。
入ってきた場所から廊下へ通じるドアを開けると、とたんに呼吸を感じた。
こちらの気配に気がついた誰かが廊下の先で振り向くのがわかる。
諒が木刀を構える中私は手探りで廊下の電気のスイッチを入れた。
「愛!?」
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