のん子の彼氏

傷口

傷口

のん子は布団にくるまり、涙をこぼし続けた。心の奥に刻まれた傷口は、思い出すたびに疼き、彼女を苦しめていた。会社に行く気力はなく、部屋の中でただ時間が過ぎるのを感じるだけだった。優香が訪ねてきて、のん子の様子を見て眉をひそめた。「あいつら、恋愛サークルとか言って、女を舐めてんじゃないの?」優香の声には怒りが含まれていた。彼女なりにのん子を励まそうとしているのだが、のん子にはその言葉が心に響かなかった。
「優香、もういいよ。私が選んだことだから…」のん子はかすれた声で答えた。自分の気持ちがまだ整理できていないのに、他人の言葉を受け入れる余裕はなかった。優香は深いため息をついた。「のん子、こんなふうに自分を責めないで。あの男が悪いんだよ。遊び半分で近づいて、結局逃げるなんて最低じゃない。」
「違うの、優香。康夫は…そんな人じゃない。ただ、私たちが急ぎすぎただけ。」のん子は涙を拭いながら、康夫のことを思い返した。彼が彼女に優しく接してくれた時間は、決して嘘ではなかったと信じたかった。
「でも、それでのん子がこんなに傷つく必要なんてないじゃない。」優香はその言葉を飲み込むように言った。友人が苦しむ姿を見ているのは辛かった。のん子は優香の肩を借りながら、静かに涙を流し続けた。傷口が癒えるまでには、まだ時間がかかりそうだった。しかし、その痛みを通じて、彼女は少しずつでも強くなっていこうと心に決めた。顧問の涼子は、恋愛サークルの報告会で語られた出来事に耳を傾けながら、内心で驚きを隠せなかった。柏原康夫が本当に三日間で女性を射止めるとは、まさに予想外の展開だった。涼子自身、理論と実践の違いを痛感しながらも、この結果に複雑な思いを抱いていた。
「まさか、あの柏原が…」と、涼子は心の中で呟いた。恋愛理論を掲げる顧問として、多くの学生に恋愛のテクニックを教えてきたが、今回の件は完全に計算外だった。のん子がこんなにも深く傷つくとは思いもよらなかった。
「のん子には、本当に悪いことをしたわね…」と涼子は自責の念を感じた。恋愛サークルの活動が、ただの遊び半分の実習で終わるはずだった。しかし、現実はそれ以上にのん子の心を揺さぶり、深い傷を与えてしまったのだ。次のサークルの集まりで、涼子は皆に目を向けながら、慎重に口を開いた。「今回の件で学んだことは多いわ。恋愛は理論だけではなく、感情が伴うもの。だからこそ、相手を傷つけないように、もっと慎重になるべきだった。」
彼女の言葉に、サークルのメンバーは静かに頷いた。それぞれが今回の出来事から何かを学び、次に進むための糧にしようとしていた。涼子もまた、自分の教え方を見直す必要があると感じていた。恋愛の難しさを改めて認識し、これからのサークル活動に活かしていこうと決意したのだった。

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