ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
 不意打ちのキスをしてきた残業の日、あの後も同じだった。
 逆に不自然なくらいに普段通り。周囲にとってはそれこそが自然なはずなのに、私だけが知る彼の不自然さを前に、苛立ちを爆発させてしまいそうになる。

 その日の朝礼は、部ごとでなく全体での朝礼となった。
 いつもなら「よろしくお願いします」という定型の挨拶で締め括られるところ、営業部長は「一点、重要な連絡があります」とおもむろに咳払いをした。
 営業部長はそわそわと浮足立ったような顔をしていて、珍しいなと思う。その後彼が切り出した話に、ああ、と私は納得した。

「先日の会議の結果、新店舗の運営と建設に関する詳細が決定しました。週明けより、そちらの準備室を新設します」

 準備室の室長に別部署の課長が任命されるため、営業課の課長はそちらの課へ異動に。それから、三浦さんが準備室のチームリーダーに任命され、しばらくの期間は現場に。
 営業部長の話を大まかにまとめると、そんな感じだった。今日、全部署合同で朝礼が行われた理由にもようやく合点がいく。

 そしてひとつ疑問が浮かんだ。おそらく朝礼に参加しているほぼすべての社員の関心は、きっと私と同じところに向いている。
 すなわち、空いた営業課の課長の席に、誰が座るのか。
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