ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
第1章 流されガール、丸め込まれる

《1》ガールズトーク

「そっかあ、もう三ヶ月になるんだね」

 対面に腰かけた親友が、感慨深そうな声をあげる。
 どこか遠い目をして呟く仕種に、私はつい噴き出してしまう。

 彼女の手元にはアイスカフェラテがひとつ。プラスチックのカップを泳ぐ氷が、小気味好い音を立てて崩れ、私に夏が近いことを思い出させる。
 対する私はホットのブレンドコーヒーを啜りながら、私も冷たい飲み物にすれば良かったかなぁ、と小さな後悔を覚えていた。

 五月半ば、天気は快晴。
 私、那須野ゆずは、久しぶりに――といってもせいぜい一週間ぶりだけれど――同期の宮森(みやもり)果歩(かほ)と職場近くのカフェを訪れていた。

 昼休憩で唐突に外へ出たくなって、私から声をかけた。
 昨年までは勤務先が違ったものの、一年前に私が本社へ異動してきたことで、元々交流があった私たちは一気に親しくなった。休憩時間や退勤後に食事へ出かけたり、あるいは今のように別れた恋人の話を切り出したり、そんなあけすけな話ができる程度には気心が知れている。

「うん。時間の流れって本当、あっという間だよねぇ」
「やだぁなにそれ、年寄りくさい」
「いいですよ~、どうせ枯れてますよ~だ」
「よく言うよ、あたしより若いくせに」
< 2 / 242 >

この作品をシェア

pagetop