ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
 大卒で入社した果歩は、短大卒で入社した私よりもふたつ年上だ。
 最初の頃こそ改まって声をかけていたけれど、一年前の異動を機に、普通に話せるようになった。

 長く伸びた深い茶色の髪、巻かれた毛先、手入れの行き届いた指と爪――とにかく果歩は可愛らしい。そして意外なほど気さくで、頼れる姉御肌といった性格をしている。
 異動直後、新しい環境の中でなにかとナーバスになりがちだった私は、彼女の存在とアドバイスに何度救われたか分からない。

 私はといえば、果歩とは対照的な外見をしている。幼稚園児の頃から列の最後尾をマークし続けた身長は、今でもそこらの男性陣と並ぶ……いや、あっさり越えるケースも珍しくないくらいには高めだ。
 顔立ちについては、今まさに話題にしている〝三ヶ月前のできごと〟のせいでメンタルを抉られている分、あまり触れられたくないのだけれど、極めて地味だ。メイクでなんとか持ち直しているだけで、自分としてもコンプレックスではある。

 ……いや、違う。
 私がコンプレックスに感じているのは、素顔そのものというよりは、それに対する周囲の目だ。

「けど本っ当あり得ない。デリカシーがないにも限度があるよ、あいつ」
「うーん、でもまぁ仕方ないよ。なんていうか、元から歯に衣着せないタイプではあったし」
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