ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
「うん。むしろなんでここまで拗れたのか、そっちのほうが俄然気になる」
「俺も~。マジで意味分かんねえよ、特に沓澤課長」

 沓澤課長と正式にお付き合いを始め、早ひと月。
 口を尖らせる同期と先輩同僚を前に、私は中途半端な笑みを浮かべる。

 昼休憩に果歩と出かけた近くのカフェで、たまたま三浦さんと鉢合わせた。空席が見当たらなかったから同席させてもらって今に至る。

 結論から言うと、ふたりとも容赦がなかった。
 営業課の面々は、基本的に私たちの交際に対して祝福ムードだ。三浦さんはその筆頭に近いが、たまにこういう毒を吐く。今はそこへ果歩も加わり、なぜか私が責められている感じになっていて、少々居た堪れない。

「そうですね……」

 小さく相槌を打った後、ふたりと視線を合わせることなく私はアイスコーヒーをちびちびと啜った。
 冬を目前にしたこの季節に、どうして私はアイスコーヒーを頼んでしまったのか。
 そういえば、夏にはよくホットコーヒーを頼んでいた気がする。あべこべな自分のチョイスに、うっかり笑いが零れる。

「長期出張のときもさぁ、さんっざん那須野さん那須野さんって騒いでおいて……そのくせに連絡一本入れてねえとか、そんなん聞いたときにはもう眩暈がしたよな」
「うーん。押せないタイプなのかな、沓澤課長って」
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