ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
「いや、あれは自分から押したことがないだけだな。これだから困るんだよ、ほっといても女が寄ってくる系のハイスペックイケメンは」

 三浦さんは別に私を責めているわけではないと分かっていても、なぜか彼の言動のひとつひとつが胸に突き刺さる。
 事情を知る人間から見た場合、私たちが交際に至るまでの経緯は、もどかしい以外の何物でもなかったようだ。特に三浦さんは、私が知らない長期出張中の沓澤課長を知っている。

 ……『さんざん那須野さん那須野さんって騒いでた』んですか、沓澤課長。
 そんな話は聞いていない。次の休日にでも、直接訊いてみなければ。

「けど良かった。ゆず、最近すごくいい顔で笑うようになったもん」
「え、那須野さん泣かせたら絶対許さねーし」
「三浦さんはなんでゆずのお父さんポジションなの? しかも相手が上司なのに全然怯んでないよね」

 隣同士に腰かけるふたりの息の合ったかけ合いに、私はつい頬を緩めてしまう。
< 233 / 242 >

この作品をシェア

pagetop