ビター × スイート

ビタースイート

終電まで、あと1分。

絶対絶対、これを逃すわけにはいかない。

絶対に、なにがなんでも、私はこの最終電車に乗ってやる・・・!

ーーーと、意気込みだけは強いのに。

アルコールで頭はクラクラしているし、身体が思うようには動かない。

足はもつれてうまく階段を上ることもできないけれど、私は絶対終電に・・・!!

「出発しまーす」


(!?)


やっとのことでホームに辿り着いたのに、あとちょっとのところで電車のドアが閉じられた。

乗りたかった電車。

乗らなければいけなかった最終電車。

無情にも、走り出した電車は目の前からどんどん遠ざかっていく。

これでもう、私は、今日は家には帰れない。

「・・・・・・」


(ああ・・・っ、もう最悪だ・・・!近くのホテルを探そうか、金欠だから、ネットカフェにするべきか・・・)


近くにあったベンチにヨロヨロ座り、私はスマホを取り出した。

検索をかけて、ここから一番近いネットカフェを探したけれど、それでも駅から歩いて徒歩10分。

酔っぱらって、全力疾走した身体。

しかも、今日は色々あってメンタル崩壊状態だ。

この状態で、ここから改札の外に出て、10分も夜の街を歩くだなんて、考えただけでも気が滅入る。


(・・・あー・・・、疲れた。気持ち悪いし・・・、もう、ここでちょっと横になろう・・・)


私は、心身ともに疲れ切っていた。

眠気はすごいし気力だってほぼゼロで、今動いたら気持ち悪さも増してしまいそう。

とりあえず、横になってこれからのことを考えて・・・・・・。

体力も、眠気ももはや限界だった。

自然と瞼が落ちていく。

倒れるように、私は、そのまま駅のベンチで眠ってしまったのだった。









< 1 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop